プペ

カーゴのプペのレビュー・感想・評価

カーゴ(2017年製作の映画)
4.8
ゾンビ化するウィルスに感染した男。
感染してから発症するまで48時間。
背中には赤ん坊。
自身が完全にゾンビと化す前に、幼い娘を安全地帯に送り届けようと荒野を彷徨う。

残り僅かな時間を懸命に生きる父親をマーティン・フリーマンが熱演。


率直な感想としてまず感じたことは、「これはホラー映画なのか?」という疑問。
恐ろしい部分は確かに恐ろしいけれど、それよりも哀しい、親子の哀しいヒューマン映画ということに対してのインパクトの方がずっと大きかった。

ただ普通でいたかった男が、あらゆる不遇の中でもがき苦しみ、ほんの一瞬垣間見た光の眩い美しさと、即座に閉ざされる果てしない悲劇。
「恐怖」によるインパクトはあくまで装飾的なものであり、主人公の男のめくるめく悲哀に胸が締め付けられたことは、本当に想定外のことだった。

映画としては、展開的に唐突で説明不足な部分は多々あるのだけれど、この主人公演じるマーティン・フリーマンの奇跡的な表現力が、そのすべてを打ち消しているとさえ思えた。

広大なオーストラリアの大地と地の利を活かした脚本に人間讃歌と希望を見出せる、たいへん美しく、思いっきり泣けるポストアポカリプス作品だった。
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