netfilms

探偵はBARにいる3のnetfilmsのレビュー・感想・評価

探偵はBARにいる3(2017年製作の映画)
3.7
 雪原を走る1台のダンプカー、椿秀雄(坂田聡)の運転する車の助手席には道央女子大の諏訪麗子(前田敦子)が座っていた。やり手女の営業トークに思わず鼻の下を伸ばす男だったが、その行き先に白い車が停車しているのを見て態度が変わる。男は左手で拳銃を掴むと、停車する車にツカツカ歩み寄り、助手席のドアを何度も叩くが一発の銃弾が響き渡る。麗子の悲鳴の後、雪の上に仰向けに突っ伏して倒れた男の腹に更に何発もの弾が突き刺さる。アジア最北の歓楽街・ススキノ。この街の表も裏も知り尽くした探偵(大泉洋)のもとに、ある日、相棒の高田(松田龍平)の後輩である原田(前原滉)が、数日前に突然失踪した彼女の麗子を探して欲しいという依頼が飛び込む。興味本位で10080円で依頼を引き受けた探偵は、麗子が「ピュアハート」というモデル事務所を装った風俗店でアルバイトしていた事を知る。ヤンヤン(今村美乃)にセクハラまがいの行動を起こした教頭(正名僕蔵)の手引きで「ピュアハート」に侵入した探偵はそこで店のオーナーと名乗る美女・岬マリ(北川景子)に出会う。札幌経済界のホープ・北城グループの社長であり裏社会の住人でもある冷酷非道な北城(リリー・フランキー)の存在。謎に包まれたマリに翻弄されるうちに、探偵たちは大きな事件の陰謀に巻き込まれていく。

 東直己の推理小説シリーズ『ススキノ探偵シリーズ』を原作としたシリーズ第一弾。繁華街「すすきの」のバー「ケラーオオハタ」に入り浸る私立探偵俺とその助手・高田が真相を追うハードボイルド・テイストな物語は、一見何の変哲も無い事件を引き受けたところから歯車が狂う。たった10080円で鋭利な刃物でケツを突き刺され、船の突端に括り付けられる男の痛み。2より更にパワー・アップした用心棒・高田の前に現れた波留(志尊淳)という最強の男。 リリー・フランキーの怪演ぶりも見事だが、何よりも今作はシリーズ史上初めて、探偵はファム・ファタールなヒロインと肉体関係(?)を持つ。数年前のある日の雪の夜、「命を燃やすものはあるか?」という探偵の何気ない言葉、幸福な夜の後に残されたマリからのプレゼントとメッセージ。白い粉に纏わる男どもの欲望と栗山英樹のファン感謝祭。橋本一から吉田照幸にバトンタッチされた物語は、探偵と高田のハードボイルドな相棒ものという骨子には一切手を加えず、探偵とマリ、探偵と高田の微妙な関係性に迫る。相変わらず豪華な客演陣、相田(松重豊)や松尾(田口トモロヲ)、源ちゃん(マギー)や峰子(安藤玉恵)のワンポイントの破壊力も素晴らしいが、マリの姉代わりの先輩を演じたモンロー(鈴木砂羽)、終始駄々っ子のような開き直りの猿芝居を堂々演じて見せた前田敦子、発行のヒロインを演じたマリの三者三様の女性像が素晴らしい。エンドロールが終わっても席を立てないシリーズ第三弾である。
netfilms

netfilms