えんさん

あの日、兄貴が灯した光のえんさんのレビュー・感想・評価

あの日、兄貴が灯した光(2016年製作の映画)
2.0
柔道国家代表のドゥヨンは、オリンピックを目指していたある試合中の事故で失明してしまう。絶望のどん底の彼の前にやってきたのは、詐欺前科10犯で服役中だったの兄ドゥシクだった。ドゥヨンが視力を失ったことを免状として、仮釈放が認められたドゥシクだったが、15年ぶりに再会した二人はそれまでの憎しみをぶつけ合いながらも、奇妙な同居生活を始めていくのだった。。EXOのD.O.と「建築学概論」のチョ・ジョンソク共演のヒューマンドラマ。監督は「裸足のギボン」のクォン・スギョン。脚本は「7番房の奇跡」のユ・ヨンア。

一頃あった韓国映画ブームというのが下火になって久しいですが、それでも「シュリ」や「グエムル 漢江の怪物」など、ハリウッドに負けない演出を決める韓国映画の勢いというのはまだ死んではいないと思います。それは決して、アクションシーンが迫力満点とか、怪物を描くVFXが凄いということだけではなく、こういった物語を仕掛けてくるか、、というストーリーの奇抜さも然るところ。特に、本作の脚本ユ・ヨンアが手がけた「7番房の奇跡」は囚人房でこっそりと子育てをしてしまうという奇抜すぎるお話。そのヨンアが本作で物語にどんなマジックを仕掛けるかが楽しみな鑑賞でした。

本作のメインになるのがオリンピック代表にもなるはずだったドゥヨンが失明を乗り越え、再びパラリンピックの柔道代表としてのし上がるまでのお話。そこには仮釈放中のダメダメ兄貴ドゥシクの存在があるわけですが、失明で人生どん底のドゥヨンをことさら励ますわけでもなく、むしろ彼が築き上げた名声や財産をことごとく利用してやろうという図太い展開は良し。とはいうものの、肝心の後半部でドゥシクが弟にしっかりと向き合うお涙頂戴の展開は、いささか安っぽいというかTVドラマ並みのチープさなのがいささか残念です。D.O.やチョ・ジョンソクの真面目な演技は良いですが、ノリも展開も映画という枠組みには少し物足りなくも感じます。ラストのパラリンピックシーンとかのお金のかかり方は映画っぽいのですが、キャラクターの愛らしさ以上の力感が作品全体に欲しいところです。確かに、泣けるお話なんですけどね。。