佐野丸

三度目の殺人の佐野丸のレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.5
これ、僕も終わるまで確信は持てなかったんですが、最後まで観て完全に確信しました。

これ、サイコパス映画です。

法廷サスペンスとしても完成度が高いと思いますが、それよりも、犯人のサイコパス性、サイコパスとはどういうものかを語ってる映画に感じました。

サイコパスとは、日本語では反社会性パーソナリティ障害と呼ばれています。

簡単に言えば究極の自己中。他人の気持ちがまったくわからない、わかろうとしない、どこまでも被害者思想。その行動には理由がなく衝動的、やりたいからやる。そして口が上手い。しかし基本的にその場しのぎで自分に非がないように話すので矛盾が生じる。そんな人種ですね。

この映画で起こった殺人事件。その犯人として扱われる役所広司さん演じる人物「三隅」がほぼ確実にサイコパスだと思うんですよ。

本来、人は行動する時には理由が伴うわけです。そしてそれは歳を重ねて大人になっていき、社会に組み込まれていくうちに制限されていき、無意識にその中でやりくりしていくようになる。守るものができれば、それが行動の理由になる。

しかし、役所広司さん演じる三隅にはそれが一切感じられない。後悔しているのか、とか問うシーンがあるんですけれども、「はい」と返事はしますが全然そう思ってるように感じないんですよ。なんで後悔するの?ってトーンなんですよ。それを出せる役所広司さんの演技は素晴らしいんですけども。

急に人が変わったように怒っていることもあれば、突然主張を変えたりしてそれを信じろと言う。そしてそれがいずれも冗談と思えない態度。最初は冷静に対処していた福山雅治さん演じる彼の担当弁護士重盛も徐々にペースを乱され、その行動、言動にひとつひとつに理由があるのではと奔走するけども、それはいつの間にか三隅に翻弄されている結果であり、観てる側もそうなっていきます。

事件は様々な人が絡んで二転三転しますが、要は善良な人たちがサイコパスに振り回されるのを観る映画だったんだな、と僕は思いました。

その決め手となったのが、最後のシーンですね。重森の問いに対する三隅の回答。これは三隅はサイコパスでしたーっていう完璧なオチでしたね。

他とは違う楽しみ方をしてしまったかもしれませんが、非常に面白かったです。
佐野丸

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