けんけんさん

三度目の殺人のけんけんさんのネタバレレビュー・内容・結末

三度目の殺人(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

『目は口ほどに物を言う』
鑑賞中ずっとこの諺が頭に浮かんでいた。

主役3人の目の演技に引き込まれた。
特に広瀬すずのあの瞳は、少女から大人へなろうとしてる10代のうちにしか表現出来ないものだと思う。
足の障害、父親からの性的虐待、母親への不信…ひとりぼっちの17才にとっての唯一の救いは、紛れもなく三隅(役所)だった。
幸が薄いとかそんなチープな表現じゃなく、深い部分から起因する心の陰みたいなものが間違いなく瞳に宿されていて、テレビ等で観る「広瀬すず」のイメージを見事覆してくれた。あの瞳は間違いなく才能で、女優・広瀬すずとして今しか表現出来ない強烈な個性だと思う。蛇足だけど、劇中で何度か『さきちゃん』(役名さきえ)と呼ばれる度に、そわそわした。耳も心も喜びながら「どこどこ?」って言ってる気がした。完全に蛇足。笑

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劇中数回挟まれる、裁判官と検察側&弁護陣営が方針会議をするパートは、とても良かった。吉田鋼太郎の「立場は違えど皆同じ舟に乗ってるんだよ…!」と諭す台詞が全てで、裁判官のノルマや法廷戦術など、そこに遺族や被告人の「感情や意思」なんかは全く介在されてない。悲しいけど司法の現実。あのパートがあって良かった。

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幾度となく出てくる十字架のイメージ。
主役3人がそれぞれ左頬を拭うシーン。
裁いたのか、救ったのか。
夢の中で、3人が雪合戦するシーン。
同じく、広瀬と役所が共じて殺害遺棄するシーン。
中国の小話。象のどこを触っているのか。

すべてのシークエンスが、「三隅の話す真実と嘘の境界線」を曖昧にし、その曖昧さこそが作中最大の魅力になっていた。

個人的には、カナリアのエピソードや窓越しに餌付けするシーン、判決後に歩きながら手から鳥を放すジェスチャーがとても好き。端から見たら残虐な殺人犯のサイコパス面なんだけど、どこまでが三隅の演技で本音なのか…全部嘘だって良いって思わせてくれる程、三隅の掴み所のない心象をうまく表現していたと思う。

広瀬すずの足の障害の本当の理由は?
どうして広瀬すずは北海道への進学を希望したんだろう?三隅の故郷だから?
福山自身が抱える親や娘との確執とか
とにかくあれこれ邪推せずにはいられないパートが毒にも薬にもならず散りばめられていて、
観賞後はすべての事に疑問符をぶつけて悶々としたくなった。
解釈は皆さんに任せますよ系の映画が好きな人にはもってこい。

斉藤由貴のウラがありそうな未亡人も妙にハマってた。話し方から声のトーンから何から、あんな母親嫌だなー。笑(褒め言葉)

エンドクレジットで『バッファロー吾郎A』って書いてて最後もう一回混乱した。笑

橋爪功がパスタ作るシーンで、役所広司出演の某食器用洗剤が不自然にこっち向いてた。笑

こういう遊び心好きです。
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