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三度目の殺人のおーつのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.9
【真実などない司法の闇。その深い闇の中に置き去りにされた感覚になる作品】
劇場公開時の評判で「問題提起をしている作品」と目にしていたので、そこを念頭においていたのですんなり見ることができた。

あれ、是枝監督って法廷サスペンスとか撮るんだっけ?と思った方は少なくないと思います。いつもは登場人物たちの日常を切りとった人間ドラマを作っているイメージがありますよね。大きな事件や山場があるわけでなく、日常のリアルな会話を通して多面的なキャラを描いてきました。

そういわれると今作は全然違うように見えて、やっぱり是枝監督作品だな~と感じました。

従来の法廷サスペンスなら、どう見ても有罪の被告人がいて、そこに現れた正義の凄腕弁護士が法廷で真実を暴いでいくという基本スタイルがあると思うんですよ。
全然そうならないのがその映画です。

たんたんと“面会→公判→対策をねる→面会→”この流れを描いていくだけで特に大きな真実がわかるようなカタルシスは全然ないんですよ!

なんでこんなヘンテコな一風変わった作りなのかというと、これが司法の世界の日常として描いているからだと感じました。
検事はなんとか被告人を有罪にしようとして、弁護士はクライアントの利益を優先して減刑を狙い、裁判官はできるだけ早く裁判を終わらせてノルマを達成したい。
これらの事だけを考えている人たちにとって真実というのは“判決で決まったこと”なんです。
従来の法廷サスペンスの主人公のように真相を明らかにしようとしないし、被告人を理解しようとしない。とにかく裁判に勝つためなら供述内容が事実と違ったってかまわない。
現に劇中のセリフで「友達になるわけじゃないんだから。理解する必要なくない?」と主人公は言ってしまいます。

そんな「正義」なんてものが存在しない非常に歪んでいる司法の世界の日常。
そう考えると是枝監督らしい作品なのだと思います。

だからこの映画では明確な答えはありません。
明確な答えが見えないのが司法の闇だからです。
観る人はその闇の世界へといざなわれて、真実という名の光を見つけることができないまま映画が終わるのです。
そうやって是枝監督は自分らしいやり方で社会に対して問題提起をしたのだと思います。

そしてちゃんと言っておきたいのが、
はっきりとはわからないがヒントは散りばめられているのでそこから真実を考えることができるのでサスペンスとしても良くできています。

タイトルが意味する「三度目の殺人」の意味は何なのか。
観た人なら“3度目”の意味から司法への訴えが見えてきますよね。

代わったテイストなので人を選びますが、是枝作品が楽しめる人は絶対にお勧めしたい一本です。