“安心安定の是枝裕和クオリティ”
最初、是枝監督が自身初の法廷ミステリーに挑戦！と聞いて今回は微妙かな～という予感がしていたが、地に足の着いた堅実な演出が光る素晴らしい作品だった。
まずこれがオリジナル脚本というだけで賞賛に値するし、イマドキの邦画にありがちな過剰な説明ゼリフなどなく、最低限のセリフと無駄のない演出でとてもリッチで高級感溢れるサスペンスに仕上がっている。
人によって人はいとも簡単に裁かれてしまう。今の司法制度にメスを入れるような鋭い問題提起の作品。和やかなホームドラマのイメージが強い是枝裕和監督がこんなにも尖った作品を撮るとはビックリした。どうしても今これを伝えたくて撮りたかったのだろう。
福山雅治はいつもの福山雅治だが、広瀬すずは『ちはやふる』の鈍感美少女バカ演技とは真逆でとても静かな内向演技。暗い広瀬すずも素晴らしい。
そして本作は何といっても役所広司。言うことが二転三転していき何を考えているのかよくわからない見事なサイコパスぶり。
ラスト、これは一体どっちなんだ？と観客に問いかけ謎のまま終わっていく展開は『殺人の追憶』を思い出した。
地味な作品ではあるが間違いなくどの面においても高水準な作品。ただやっぱり是枝監督はホームドラマが良い(笑)
