福山ファンの私の友人の女性が
「チョーつなんなかった!😡」と激怒していた作品。
まあ、福山ファンにとっては納得いかないだろう。
前半は非情な職業弁護士。後半、事件の真相に迫ろうとするが、何となく悩みながら縮んでいくような役。
ガリレオのように鋭く、さっそうと真実を暴く活躍を期待したファンは完全に肩透かし。
是枝さんは、もちろん営業優先のキャスティングという側面もあるだろうけど、一般的な事件ものの解決を一切取らないことにこだわって、「そうは行くか!」と福山キャスティングだったようにも勘ぐってしまう。
肩透かしと言えば、従来の是枝作品のファンも肩透かしを食わせている。
「そして父〜」「海街〜」と「家族をつくる」という分かりやすい、度ストレートなボールを投げ込んでいた監督が、
突然ナックルボールを投げてきたような一品。
つて言うか、キャッチャーに投げずにそのボールを観客席に放り込んできたような感じさえする。
「真実とは何か?」を問うている映画だと思うが、誰も正解を語らない、誰もそこにたどり着いていない。
まず福山雅治の弁護士。前述のように、最初は「依頼人への理解とか共感はいらない。」「真実なんてどうでもいい、法廷でどう争うかだ」と強がっているが、中盤から完全に被告の役所広司に翻弄される。
正直、ここらへんの心情の変化がやや掴みにくいという欠点がこの映画にはある感じがする。
福山雅治自身の演技の幅の問題もあるだろうけど、脚本としてこの人物の膨らませ方が中途半端な気もしてしまう。
その代わりとして、福山弁護士の悩みの部分を、彼よりもっと現実的な吉田鋼太郎と、もっと理想を追いたい満島真之介を置いた。
このキャスティングはとても成功し、映画に厚みを加えていると感じた。
被告役所広司。つかみどころがない。
観客は彼をどう見ていいのか最後まで定まらない。
「凶悪」のピエール瀧なら怖がればいいし、「グリーンマイル」の大男には共感することができた。
形式的に慣習的に進めていく裁判も映し出されるが、「それでも僕はやっていない」のように、裁判制度への批判の映画とも違う。
この映画は、多分敢えて、観客をどこに立ち位置にも付かせないように仕向けているのではないだろうか。
もう少し突っ込んで見ていきたいが、当選そうなるとネタバレになるので、ここから先は未見の方、観る予定がある方は読まないほうがいいかな。
本作のモヤモヤ感をちょっと突っ込んでいくと、
真相解明の為のキーになる事件が「結局どーだったんだよ〜?」て、感じで、その後全くはっきりさせていない。
真相解明の鍵になる事案
①役所広司と被害者の妻斉藤由貴との関係や、殺害依頼はあったのか?
②広瀬すずに対する被害者の性的虐待と事件との関係。
③食品偽装と事件との因果関係
普通の犯罪・法廷ものだったら、上記の事案が後半、謎解き的に再現される。
しかし、本作はそれらに必須的な再現シーンが全くない。
あるのは事実か妄想か区別が付かない幻想的な場面。
そして、最大の謎、、、、
「三番目の殺人」て何?
私流の解釈なんですが、、、
後半吉田鋼太郎が
「こうやって、弁護側も検察も裁判官もみんなで司法って制度を守っているんだよ」と語る。
制度・体制・慣習などそれらが優先され、人々はシロクロはっきりされることを良しと強く望む。福山出てきたら、スパッと解決みたいに、、
でも、真実なんて、いつもはっきりするもんじゃないんだよ、
ほら、今回だって、分かんないけど、死刑にしちゃつたじゃない!
もし役所広司が本当にやってなかったら、それって「殺人」だよね。
「三番目の殺人」を国家が犯してるんだよね、って。