YokoGoto

三度目の殺人のYokoGotoのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.2
ー観終わったあとで、何度も何度もタイトルを反芻する作品ー

どこまで本音でレビューをするか、実に迷う作品です。
多くの映画好きの多くのファンを持つ是枝監督作品ですので、正直、あまり皆さんを敵に回したくはありません。(笑)

ひとまず、自分が気になった点だけ簡潔にレビューします。

まず、冒頭の河原のシーンからの火花のオープニング。
実に、美しかったです。

なんでしょう。
何かが起こる、何かの幕があける。
そんな期待と裏腹に、ゾクゾクした胸騒ぎを感じるシーンで始まりました。後ろで流れる、透明感のあるピアノの旋律も、美しさに磨きをかけるという感じです。非常に素晴らしいオープニングだと思いました。

そして、映画のタイトル。
『三度目の殺人』
こちらも秀逸でした。正直、シナリオの中には三度目の殺人を明確に表すシーンはありません。なので、何が三度目の殺人なのかは、考えないと分からない仕掛けになっています。

ただし、法廷ミステリー後半で、主となる登場人物3人のセリフや状況を見れば、三度目の殺人の輪郭がぼんやり見えてきます。
法廷ミステリーでありながら、完全なる社会派作品となっていました。

監督が描きたかった『裁き』と『罪』。
恐らく、映画を観た人には大枠の所で伝わったとは思いますが、しかしながら、あまりにも主となる登場人物3人(犯人・弁護士・被害者の娘)のキャラクターと人物像、背景が未完成すぎたように思いました。

もちろん、それぞれの立場で、『裁き』と『罪』を語る語り口調は痛いほどわかりますが、あまりにも一人ひとりが中途半端すぎます。

特に、弁護士役の福山雅治さんのポジションが、理解できませんでした。
裁判の勝利にこだわる、冷ややかな弁護士が、最後まで理解できなかった犯人に対する感情や分析が見えてこないのです。

『犯人の感情など理解する必要がない』と言っていたクールな弁護士が、最後の最後に迷いながら弁護をする姿は、あれは混乱なのか、苦悩なのか、それともやはり冷めた目でみていたのか。

弁護士の人物像の描き方が、まさに消化不良で、しっくりみぞおちに落ちませんでした。

この物語は、犯人(役所広司さん)の物語ではなく、弁護士(福山雅治さん)の物語ではなかったでしょうか?
なのですか、表情からもキャラクターからも、セリフ回しからも、最も心に響く核のようなものが掴み取れなかったというのが、正直な感想です。個人的には、福山雅治さんの表情とセリフ回しは、映画向きでは無いように感じています。表情にリアリティを感じにくいのです。(当然のことながら、大好きなファンが沢山いらっしゃいますから、これは恐らく好みの問題でしょうし、私のほうがマイノリティかもしれませんし。これ以上突っ込むのはやめておきますね)

役所広司さんの演技は、言わずもがな素晴らしいとは思いましたが、やはり意外性はあまりなく、いつもどおりの安定感という感じでした。そのため、犯人である彼を、どう扱ったら良いかわからないのです。これが、観る人を消化不良に陥らせる。これが監督の狙いなのでしょうが、残念ながら、心は揺さぶられませんでした。

深層を語らない曖昧な犯罪者という、難しい役どころではありましたが、個人的には、あまり印象に残らなかったという感じがします。

広瀬すずさんは、とても表情がいいですね。
映画向きだとは思いますが、演じさせ方によって、だいぶ違ってくるタイプだと思います。今後は、あまり優等生の演技はしてほしくないなと心から願います。

あれあれ。

冒頭で、『簡単にレビューする』といいながら、めっちゃ長文になってしまうあたりが、やはり消化不良で終わってしまった感への、ささやかな抵抗なのかもしれません。ファンの皆さん、土下座して誤りますので、ご容赦ください。m(__)m
YokoGoto

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