回想シーンでご飯3杯いける

三度目の殺人の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.8
是枝裕和監督が日本の司法制度とがっつり向き合った法廷サスペンス。僕が住む大阪では、公開当初に大阪弁護士会が推薦キャンペーンを展開していたぐらいで、実際、裁判官、検察官、弁護士の、各々の役割や立場をかなりリアルに描いているのではないだろうか。また、訴訟経済や裁判長による訴訟指揮にまつわる告発的な描写があり、かなり突っ込んだ法廷映画だと思う。

物語は、福山雅治と役所広司による面会室でのやりとりを中心に進められる。加えて、広瀬すず、斉藤由貴等の周辺人物が、新たな謎を持ち込み、裁判の行方が二転三転していく。役者陣の演技や視点の移動をとらえるカメラワークは是枝作品の真骨頂といった感じで申し分無しだ。

ただ、福山と役所が疑問文を多用した会話を繰り広げるのに対して、その答えを聞かないまま終わってしまう構成にやや不満を感じたのも事実。不満が残るが故に、アクリル板に写る2人の顔がクロスする演出や、十字路に立つ福山の象徴的な構図等、技巧的・隠喩的な伏線の張り方が少し嫌味に思えてしまった。もし本作が起訴されたら「伏線の不法放置」罪で、執行猶予付きの実刑判決が下される事になると思う。