是枝監督の作品は何作か観てるけど、淡々としていて 核に辿り着くまでに飽きてしまう事が多くて あまり得意ではない。
結局は真実すらも曖昧にして 空気と余韻でじんわりと考えさせるよね。今作もそんな空気を持たせつつも、ジャンルは珍しく感じた。
最後に委ねられたものの、今のところ 繰り返し観たいと思うところまで行ってない。
重盛のキャラクターも邦画のサスペンス系にありがちで、変わっていく様も既視感というか このパターンかみたいな感じがした。
重盛は 冷徹で あくまで弁護士としての仕事を全うしていて、被害者どうこうそんな事は関係ない。人情のかけらもない薄情な部分が発言から多々垣間見られる。そこに引きながらも、重盛とは正反対の性質を持った仕事仲間達とバランスの取れた空気で重盛を中心に動いていくのだが…
重盛の発言から感じられる冷たさや傲慢さみたいなものが、娘との不和を物語っていたが、娘自身も この親にしてこの子ありとすら言いたくなる娘だった。
魚についての話で、己の娘には諭すのに、自分は事件現場で手すら合わせなかったことに感じた違和感。そんな矛盾と娘の孤独が電話や表情から伝わってきて、そこを見て見ぬ振りする重盛が 三隅と出逢ってから対話をする度に己の問題を見透かされ、少しずつ気付かされて行く様子が見どころかもしれない。
三隅の洞察力と何を考えているのか分からない様子が 流石役所広司!なんだけど、今回の役はあまり楽しくなかったな。(やっぱり黒沢清の役所広司が最高過ぎて。)
三隅は 純粋過ぎて不器用過ぎてそうなったのか、単なる極悪人なのか……。
重盛…ちょっとタイプは違うけど、リンカーン弁護士みたいなところがある。
三隅との交流を通して、重盛が狂うように変わっていくのが面白い。
最初は 後輩弁護士に対し、理解とか共感なんて弁護するのにいらないよ!と冷たく言い放った重盛が、最後の方には三隅に翻弄されて 涙まで流している。
三隅の本当の姿とは?本心とは?
途中から 三隅が 重盛の鏡となって見えてきて面白かったが、終盤にはもう頭がついていかなかった。
化けの皮を剥がされていくけど、本当の姿は闇のまま。神のみぞ知る 的な…。
司法制度の裏側というか、被害者遺族には観て欲しくないなぁというのが正直な感想。うーん、微妙。