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三度目の殺人のNAOKIのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.8
この映画を観た時…おれが真っ先に考えてしまったのは…

この事件の真相はいったいどういうことか?…とか
登場人物たちはどういう人間たちか?…とか
これは日本の司法を考えさせる社会派のテーマを含んでいるのか?…とか
「三度目の殺人」というタイトルが意味するところは?…とか

…ではなく

これは「あの」是枝監督の作品なのだ…ということ…

色々な形の家族を撮り続けている是枝監督はこういう映画も撮るんだ?…とちょっと意外な気がしたおれはすでに監督の術中にはまっていたのかもしれない…

嫌らしい言い方だけど、今日本で一番金を稼ぎ出す監督だと思います。おれの親世代もおれの子供世代もみんな観たい監督なんて他に思い付かない…日本のスピルバーグだと思います。
ペンタゴン・ペーパーズとレディプレイヤー1を同時に撮ったスピルバーグ…

是枝監督は一級のエンターテナーであり、それをあまり表だった形にせず作家性を際だたせた映画を撮り続けてヒットさせる。

凄く優しい柔らかないい人に見えて…実はクレバーで冷徹でしたたかな映画監督だと思ってます。

これはディスってませんよ…称賛してます。
ものすごく善人で好い人は人間としては最高だけど映画監督としてはすっかすかのつまんない映画しか撮れない…
おれの好きなハリウッドの監督なんて社会不適応者か変態ばっかりだもん…

その証拠に福山くんが主役の弁護士で犯人役を役所広司さん…普通は逆の方が面白そうと凡人は考えます。この配役が実に是枝っぽい。

天使のように大胆に…
悪魔のように細心に…

有名な黒澤明の言葉ですが是枝さんを見てるとこの言葉を思い出します。
天使が大胆で悪魔が細心?普通は逆でしょ?と凡人のおれは最初聞いた時に思いました。

是枝さんだから「海街diary」が撮れたし…カンヌでパルムドールを万引きして来れたんです?

この映画…法廷サスペンスものとしてとにかく面白い!最後まで目が離せない!
振り回されてもおれたちはその謎や裏のテーマを必死に考えさせられる。是枝マジックにはまっているのです。

映画の中で役所広司が言う…
「ほう…そんな風に受けとりましたか?人間…自分が気持ちがいいように考えがちです…それはいい解釈だなぁ」

おれたちが言われてるんです!

ただストーリーを面白がらせたり社会派のテーマを考えさせたりするのは、他のテレビ出身なんかの監督に任せとけばいい、是枝さんが言いたいのは…たぶんこれだけ…

真実はひとつだけど正解は無限…
みんなが表層的に見て納得してる世界の裏には無限の正解が潜んでる…おれの映画すべてはもちろん、あなたの周りもね。
真実はひとつだけど正解は無限なんだよ…

映画館での初見時…この映画のラストシーンとなる絵を見た瞬間…おれは…
「はい!ここでカット…エンドロール!」と頭の中で叫びました…その通りになり映画は終わりました…
やっぱりね…キーワードは「十字架」でしょ?…ねぇ監督!

「ラストの絵とカットのタイミングまで当てたよ…是枝監督…おれの勝ち…だよね」

監督はニヤリと笑って言う…
「おれが当てさせたんだよ…気持ち良かったでしょ?」

おれみたいなひねくれた映画の見方をする人間も監督には想定済みで…まんまとおれも術中にはまって楽しませてもらったってこと…

天使のように大胆に…
悪魔のように細心に…

これは黒澤明の言葉ではあるけども…
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