このレビューはネタバレを含みます
これは真実を明らかにする映画ではない。真実はあやふやで、雲のように掴めない。見る人によってその形は変わってくる。
結局、手を下したのは三隅(役所広司)だったのか？三隅は咲江(広瀬すず)を救ったのか？
判決が認めた「真実」を、重盛(福山雅治)も、そして観客である私も呑み込めない。「本当はこうだったんじゃないか？」という「自分の信じたい真実」を三隅に探してしまう。
ラスト近く、ハッとしたように重盛がこぼした「あんたは器なのか？」という言葉は、そういことをいってるんじゃないかと思う。真実を見極めようとしても、結局は「自分にとっての真実」を見るだけで、本当の意味での「真実」にはたどり着けない。最後の最後まで、「あなたは何を真実だと思うか」でしかないのだ。裁判を経てもなお。
「三度目の殺人」。これが死刑のことを示していると気づくとハッとさせられる。死刑というのは、人を殺すという点では三隅が犯した一度目、二度目の殺人と何ら変わらない。うーん。
