菩薩

空(カラ)の味の菩薩のレビュー・感想・評価

空(カラ)の味(2016年製作の映画)
3.6
鬱、摂食障害という難しいテーマ、かつ女子には男には分からん同調圧力もあれば脅迫観念もあるのだろうから大きいことは言えない。監督の実体験に基づいているとのことだけあって摂食障害に突入しその泥沼にはまっていく過程はあまりにもリアル。ただ終盤に進んで行くにつれ虚飾が大きすぎてやや興醒めはする。こう言うテーマはもっとシンプルに、派手に描く必要は無いとおもうのだが…。何不自由ない家庭生活、学校生活、しかしそのなかである日突然居場所を喪失した感覚に陥り、他者に比べ劣っている自分自身に気づいてしまう。そんな自分の苦しい感情を誰かに知られるのが恥ずかしい、何より心配をかけたくない、だから遠ざける→孤独、助けてを言える相手もいなくなり更に辛い、結果更なる重圧が自らにのしかかり、より深く深く沈んでいってしまう。不安→摂食→自己嫌悪の終わる事の無い負の連鎖、ごめん、大丈夫が口癖の強がりが身に染み付いてしまった人間の苦悩は痛いほど伝わってきた。身体的バランス感覚が劣っており平均台を最後まで渡りきれない人がいる様に、精神的バランス感覚を保つのが下手で人生を1人で渡り切るのが時に困難な人間も当たり前の様にいる、そんな時下で怪我をしない様に支えてくれる人がいると言うのがどれだけありがたい事か、たとえそれがどんな人間であっても。監督が自らの苦悩を乗り越えこの様な作品に昇華したと言う事実は賞賛されるべきものだと思うし、鬱を経験して無い人からしたら不愉快に映る作品かもしれないが、他人のこだわり・悩みを否定する権利が無いのと同様、理解できずとも否定されるべきでは無い作品だと思う。頑張らない、無理しない、そしてさせないってのが当たり前の世の中になればいいと思うし、誰かに何かをして貰ったらありがとう助かりました、君は何か困っている事ないかい?と、ギブアンドテイクで皆が軽く過ごせる世の中になればいいと思う。
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