emily

空(カラ)の味のemilyのレビュー・感想・評価

空(カラ)の味(2016年製作の映画)
3.7
家族や友人達に囲まれ、何の不自由もない日々を送っていたが、摂食障害に陥ってしまう女子高生の聡子。家族や友人もなんとか力になろうとするが、聡子は心を開くことができない。そんなある日マキという女性に出会い仲良くなるが。。


夏景色、何気ない友人達の会話、何気ない日々に時折閉鎖的なカメラワークで聡子の心の闇を覗かせる。不満はないが、満足してるわけではない。埋まらない空虚を過食に走り、罪悪感から吐き、やがてそれが習慣になる。

しかし周りは気がつかない。本人が声をあげない限り気づいてもらえない。仮面を被り踊る。心を開ける人、たったひとり 嘔吐の後は念入りに手を洗う、徐々に痩せることで体に支障が出てくるのをゆっくり描写していく。ふとした描写を繊細に紡ぎあげることでよりリアルな状況描写には監督自身の経験がしっかり生かされている。

「助けて」と声をあげても何をして欲しいのかわからない。ただ欲しいのは共感で、自分のことを認めてくれる人なのかもしれない。それでもいいんだよと言ってくれる存在なのかもしれない。一番近くにいる母親でもなく、友達でもなく赤の他人のマキの存在だった。

挙動不審で人との距離が図れない自分より随分年上の女性。彼女もまた問題を抱えており、だからこそ一緒にいる事でお互いに支えになる。何か言葉が欲しいわけではない。聞いて欲しいわけではない。ただ側にいるそれだけで意味がある。結局誰かの何かになれる事で人は強くなれる。守れなくても守ろうとする姿勢は自然と自分を守り強くするのかもしれない。
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