ディーン・フジオカの俳優仕事を初めて拝見。僕の記憶の限り、何をやっている時も表情が変化しないことや、プロフィール詐欺の噂を聞いたりしたことで、「とにかくよい仕事してたらなんでもいいや」と目についたこの作品を見る気になりました。しかし、まずこの作品におけるディーンさんは、僕がテレビで見た記憶のある『表情の全くない人間』から一切はみ出すことはなく、ていうかセリフ棒読みで表情がないから、「こいつ超大根なのでは」という気持ちを大きくすることになりました。
この映画のテーマである結婚詐欺とは少し違うものの、少し前の『後妻業の女』でも見習ってほしい。異性をだまして金を巻き上げるってことは、伊達じゃないということくらい、実際に結婚詐欺師をしてない人間にだってわかります。それを仕事として行うということは、なりふり構ってられないわけですよ。しかし、この作品では「女を惚れさせた瞬間」の表現に、テナントにピアノ持ち込んで夢語りつつ弾くという、女の感性を心底舐め腐ったバブリーおじさん丸出しのクソだせえ映像があります。その後の女のセリフとかは、タイミングも含めて「これはギャグなのか、後妻業もコメディだったし」と非常に感性を揺さぶられました。まあそればっかじゃないですけど、どうやら「セックスにさえ持ち込めば結婚詐欺れる」という快楽天的世界観でもあるらしく、基本的に騙す・騙されるという領域でのエンタメには全く到達できてない代物でした。
もちろん、大人が書いたと思えないような脚本も原因の一つです。詐欺エンタメとして破たんしている、またはそういう風に見せるつもりがないというなら、主役が全くわりに合わない詐欺稼業をしている原因を追究して、キャラクターを掘り下げるという方向に意識を切り替えて見ていたのですが、冒頭の歌、ルービックキューブ、ロッカーの携帯、全く変わり映えしない衣装、自宅まわりのあれこれとか、つながりそうでつながらない、意識を分散させてこちらに全くリターンのないガラクタばっかでした。
結局その根っこって、ディーン・フジオカの（少なくともこの作品における）超絶大根俳優仕事に原因あるんですね。俳優の魅力を引き出せないのは監督や脚本家の不手際だと思いますけど、もしかしたらディーンさんてスティーヴン・セガールクラスに芸風狭い人じゃないでしょうか。ただ、みなさんこの作品を見た時に、萬田久子の俳優仕事にきっと癒される。このありがたみがある分、見てよかったなと思いませんでした。
この作品に関して、おかしいところ、イラつくところ、恥ずかしくなるところ、意図しない笑いが漏れるところ、際限なくあるのですが、それを洗い出す作業に払うカロリーがもったいないと思うわけです。映像のテンポの悪さ、何が言いたいかわからんセリフ、アホな詐欺師コンビなど、始まって数分で「これやっちまったな」と豆をつかんで抜けなくなったツボの中の拳にコンクリを流し込まれたことに気づくはずです。ディーン・フジオカファンでもきっとつらいぞ！EDテーマもディンフジ師匠が歌ってるぞ！つらいぞ！
