MasaichiYaguchi

ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.4
アメリカ文学史上最大のペテンと呼ばれるJ.T.リロイに纏わる騒動を描いた作品としては、当事者であるローラ・アルバートの視点で浮き彫りにされたドキュメンタリー「作家、本当のJ.T.リロイ」が有名だが、クリステン・スチュアート主演で映画化された本作では、ローラに“アバター”にされたサヴァンナの視点で事の顛末が描かれていく。
J.T.リロイの一連の騒動が未だに取り上げられるのは、首謀者ローラによる「嘘八百」に一般大衆だけでなく、映画監督ガス・ヴァン・サント、ミュージシャンのコートニー・ラブ、女優のウィノナ・ライダーのような業界セレブまで巻き込んだ点にある。
そもそもハリウッドで映画化された「サラ、神に背いた少年」が「著者の実体験に基づく小説」ということ自体、「真っ赤な嘘」だし、この小説が一躍ベストセラーとなり、嘘がバレないように義理の妹のサヴァンナをJ.T.リロイに仕立て上げたことが全ての発端だ。
この世界を騙した稀代の噓つきに操られてしまうのがサヴァンナなのだが、お金を目当てに“アバター”をしていたのが、業界やセレブ達の華やかさに触れる内に彼女の内面で変化が起きていく。
映画では短い期間のような描かれ方をしていたが、実際は6年近くも彼女は“アバター”を演じ続けていた。
だが、何事にも終わりはくる。
チラシやポスターで「操り人形のめざめ」というキャッチコピーが躍っているが、本人の意識の変化と社会のJ.T.リロイに対する疑惑が顛末の終息に拍車をかける。
それにしても何故6年近くも彼女らは世間を欺くことが出来たのか?
一つはローラの騙しが巧みだったことと、更に“アバター”のサヴァンナの演技が上手かったことが挙げられる。
そして私が思うには、騙されたセレブを含めた多くの人々が、J.T. リロイという過激で辛い人生を歩んだ若者の存在を信じたかったのだと思う。