EDDIE

ふたりの J・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏のEDDIEのレビュー・感想・評価

4.0
嘘に嘘を塗り重ね引き返せないところまで来てしまう。ベストセラー作家JTリロイのリアルを描いた真実に基づいたドラマ。物語の帰結に驚きはないがこれが実話だと考えると壮絶すぎる。キャストも結構豪華。

いやぁ世の中知らないことだらけ!
偽りの美少年作家ということで世間を賑わしたそうですが、全然知りませんでした。辛うじてJTリロイという名前ぐらいは知っていた程度です。

あらすじにある通り、JTリロイはローラという女性のペンネームで、彼女のアバターとしてサヴァンナを雇いリロイを演じさせたというもの。つまりは我々はその正体を知ったまま、主人公のサヴァンナの目線で物語を追っていくので、すべてを知った上で鑑賞することになるのです。映画としては大きな驚きはありません。
ただ嘘をつくとまるで麻薬の依存症のように「もう一回だけ」と言いながらやめられなくなっていく、そんなサヴァンナの心情を追う人間ドラマとして観ると面白いです。
サヴァンナは最初こそ演じることに不慣れなので、出来るだけ口数を少なくシャイなリロイを演じるわけですが、セレブリティとの交流やリロイの小説原作をハリウッド映画化させると息を巻くエヴァとの深まる関係性をもとに、リロイとして演じることを楽しみ、まるでローラの作り出したリロイそのままのような人物になっていくのです。
自分の中で大きくなっていくリロイの存在、エヴァに恋する自分を抑えられない脆さ、そして世間を欺いている罪悪感と様々な感情を同時に背負うことで心的負担がどんどん大きくなっていきます。

今回このサヴァンナ役にクリステン・スチュワートを配役したことが大きな功績だと思います。以前は『トワイライト』で共演したロバート・パティンソンとパートナーとなりましたが、破局後には主に女性との恋愛沙汰が多く取り沙汰されるようになります。本レビュー投稿時点での恋人ディラン・マイヤーにはプロポーズ計画まで表明しており、完全に同性愛を貫いているように見える彼女。ただし、彼女はあくまで目の前の恋に全力なだけで、男女は問わない“曖昧”状態にあるようで、このような中性的な彼女を配役したからこそのリアリティを感じることができました。
そして、リロイの本当の顔ローラを演じたのが、先日『マリッジストーリー』でアカデミー賞助演女優賞を受賞したローラ・ダーン。個人的には「マリッジストーリー」よりも本作のローラ・ダーンの方が演技の面で言うと凄かったです。1人の女性としてのローラ、作家としてのローラ(リロイ)、リロイのマネージャー的役割のスピーディーとあらゆる人格の異なる自分を演じ分けていました。これには唖然。彼女の演技力を堪能するならば本作を鑑賞することをオススメします。
ローラの恋人でサヴァンナの兄であるジェフリーをジェフ・スタージェスが演じており、さらにエヴァを演じるのがダイアン・クルーガーとキャストも豪華。ダイアンについては先日私が鑑賞した『女は二度決断する』とは異なり、ハリウッドセレブの女性監督役ということで華やかなドレスや衣装を身に纏っていることもあり大変美しかったです。

全体的にあまり評価は高くないようですが、個人的には物凄く楽しめました。真実が明かされた上で物語を追っていくため、どちらかというと俳優陣の演技力に委ねられている部分が大きいですが、その演技が総じて素晴らしかったです。

観賞後は気になりすぎてJTリロイについて色々と調べてしまいました。以下のサイトがわかりやすく全貌がまとまっていたので、ご興味ある方はご覧ください。

https://ciatr.jp/topics/294584

※2020年劇場鑑賞36本目
EDDIE

EDDIE