せりな

マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白のせりなのレビュー・感想・評価

3.0
試写会にて。

タイトルから受ける印象とはちょっと違いましたが、日本にいると脱北者の事って殆ど分からないので、そういった意味では興味深い作品でした。

脱北後の中国にいる時から韓国に渡るまでのドキュメンタリーだったのですが、意外な事もたくさんありました。
脱北のきっかけは北朝鮮から監視されるのに嫌気がさしたのと子供たちにきちんとした教育を受けさせたい等の理由から。
ブローカー経由で中国に渡るんだけど、要は人身売買でお金もらって嫁が来ない家に嫁がされるのが普通らしいです。

日本の報道を見てると、北朝鮮の一般市民の人たちって食糧難とかで貧しそうなイメージを持ちがちだけど、北朝鮮の田舎の方に住んでいたマダム・ベーでも、驚くくらいに中国の田舎の方が貧しかったそうです。
北朝鮮となら国境付近は脱北して嫁いできた人が多いみたいなんですけど、中国語が上手くないとアクセントで差別があったりして、脱北しても楽な生活が待ってる訳じゃないんですよね。

彼女は元々北朝鮮で結婚していて、子供が2人いたので中国でも結婚する事にはなるけど、中国の家族が理解がある人だったみたいなので上手く折り合いつけている様でした。
彼女は中国に渡ってからは脱北ブローカーとしての仕事もしていたみたいなんですけど、その辺りはあまり出て来なかったです。

子供たちを脱北させる為に色々やっていて上の息子を韓国にまで脱出させたのを契機に、彼女も韓国に渡る事を決意して状況が一変しました。
人目を忍んでラオス経由で韓国まで渡るのは映像で見てても大変そうだったので実際は物凄く大変だったんだと思います。
入管から出られるタイミングはかなり運があるらしいので。

韓国で残りの家族も呼び寄せて元の家族と生活を始めたものの北朝鮮の旦那とは距離ができてしまって同居人のようでした。
韓国でも脱北者はスパイ容疑がかけられることが殆どなので、拘束れたりと穏やかな生活というのはそう簡単に手に入る状況ではなかったです。
一般市民も脱北者にはあまりいい印象は持っていないそうです。

マダム・ベーは中国の夫には情が湧いている節があって、韓国籍を取得できたら中国で正式に結婚ができるので戻る約束をしていたんですけど、中国と北朝鮮どちらの家族の元に行かずに最終的には1人で生活する事を選んだそうです。

つらつら内容を書いてしまったけど、息子たちの為に何とかしようと1人で脱北してから韓国に渡る行動力と強さ、人としての複雑な感情というのが見えてくるさくひんだったと思います。

確認する術がないから真実かは分からないですけど、金正恩になってから生活は良くなったらしいです。
せりな

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