柏エシディシ

ヒトラーに屈しなかった国王の柏エシディシのレビュー・感想・評価

3.0
終戦と開戦の違いはあるものの、「日本のいちばん長い日」を想起させられた。
空爆シーンや銃撃戦はあるものの過剰にドラマティックにする事なく、手持ちカメラも効果的に使ったストイックな演出が却って緊迫感とリアリティを煽り、映画にどんどん引き込まれた。面白かった。

邦題からどんな結末になるかは解ってはいるのだけれど、それでも歴史的事実をこの様に生身の人間が演じて劇映画として観るという体験は、極東のいち観客にも今日的な思索を否応なく促される。映画は娯楽である、間違いなく。でも、それだけでない学びもあるから、自分は映画が好きなんだ。

この映画自体も、そして一般的にもホーコン7世の「英断」として概ね捉えられているようだけれど、わずかではあるのだけれど一元的なメッセージにならない様なバランス感覚が映画の中には確かにあって、そこが現代的というか、誠実さも感じた。
立派と言う言葉と縁遠い所にいる自分の様な人間は、戦争を回避する為に奔走するドイツ公使に肩入れして見てしまった。エンドクレジットで明かされるその後の顛末と合わせて、仄かに苦い余韻が残った。
柏エシディシ

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