sugar708

ヒトラーに屈しなかった国王のsugar708のレビュー・感想・評価

4.0
国王が最後まで貫いた民主主義。

お恥ずかしながら、この映画を観るまでホーコン7世の存在や第二次世界大戦中のノルウェーのことを全くと言っていいほど知りませんでした。

ホーコン7世は1905年のノルウェー独立の際に国民投票によって選ばれて国王に即位されたそうです。本作ではその「国民に選ばれた国王」というのが非常に重要な要素になっています。

個人的に印象的だったのは、ドイツ公使であるブロイアーの存在でした。彼もまた抗うことの出来ない絶望的な状況の中で、どうすればノルウェー国民が一番血を流さずに済むのかを考えて行動した一人だと思います。その点で彼はこの手の映画でよく描かれる冷酷無比なドイツ側の人間とは一線を画している印象でした。

どんな犠牲を払ったとしても信念を貫くロマンチストに近いホーコン7世と犠牲を最小限にするために妥協を求めるリアリストのブロイアー、歴史は結果論でしか語れない部分もあるためどちらが正しいかは一概には言えませんが、単純な侵略構造ではない複雑な構図がこの映画の素晴らしい点だと感じました。

ナチスに降伏を迫られながらも「この国の未来は密談ではなく、国民の総意で決まる」と確固たる決意を下す姿は自身が国民に選ばれたことへの自負と自覚を持ち、どんな瞬間でも妥協することなく国民の意思を一番に考えるという国の長に相応しいものだと思います。

ノルウェーの歴史を学びながら民主主義度世界一位と呼ばれる国の根本、ひいては民主主義の在り方が描かれている映画でした。
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