TaichiShiraishi

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

すばらしい映画でした・・・。



2013年に起きたボストンマラソン爆破テロ事件。

その被害者で両足を失ったジェフ・ボーマン。彼は事件現場で犯人を目撃、証言して捜査解決に協力したこと、また両足を失いながらもしっかりと公の場に出てきたことでボストンのみならずアメリカの英雄に祭り上げられる。しかし彼自身の再生にむけた周囲や自分自身との戦いはこれから始まろうとしていた・・・。



もうね、心が引き裂かれそうでしたよ。

ジェフは事件に会う前はただのコストコのチキン焼き担当店員。勤務態度は真面目とはいえない。30手前だけど実家暮らしで、母親には逆らえない性格。ビールとレッドソックスを愛し、友達とバーで駄弁り、彼女のエリンとは別れてはまた依りを戻すの繰り返し。

そんな彼はマラソン大会に出場した彼女の応援で沿道にいた結果爆破に巻き込まれ、両足をひどく損傷、切断する羽目に。



痛みと失意に塗れた中、たまたま犯人の顔を見ていたため証言で操作解決に貢献。一躍時の人になりマスコミの取材やアイスホッケーの開幕試合前にリンクに出て旗を振らせてもらったりするのですが。



自分が周りから好奇の目にさらされてることに悩み、自分のことを誇りだという親や親戚と対立。寄り添ってくれてる恋人にも八つ当たり。義足で歩くためのリハビリには遅刻常習。解雇しないと言ってくれた職場にも結局復帰せず、現実逃避で前と同じように一緒にバカ騒ぎしてくれる友達とバーで喧嘩騒ぎ起こしたり車でスピード違反を起こしたりとどうしようもない日々を過ごす。そんで自分の介護やリハビリの仕方をめぐってエリンと母親が目の前で大喧嘩してしまったり。おまけに彼女が妊娠していることが発覚、「俺には子供の世話なんてできない」とゴネて愛想を尽かされてしまう・・。



・・と、主人公はほんとにダメな人間なんですが、僕は

自分が同じ目にあったら絶対こうなる若しくはもっとひどいかも

と思ってしまったわけですよ。いや、ジェフみたいにいい彼女はいないし間違いなくもっと悲惨。





別に詳しい心情説明描写はないんですが、彼の気持ちはひしひしと伝わってきた。

いくら周りが英雄扱いしてくれても、言ってしまえばジェフは

「たまたま事故に巻き込まれて、たまたま両足を失うも命は助かって、たまたま犯人の顔を見てて、たまたま日常に戻れた」だけなんですよ。

特別な才能があったわけでもものすごい努力の結果でもない。



本当に周りがそう思ってくれてるかわからないし、現実では一人でベッドから降りることも、トイレで用を足すことも、性欲の処理もできない。自分で喧嘩を吹っかけても相手に殴ってすらもらえない。



後、キツイなと思ったのは、ジェフはそもそもルーズな性格の人間で割と人との約束に遅刻したりすっぽかしたりしてしまうことが多いんですが、恋人がマラソン頑張ってるからと珍しくちゃんと時間通り約束の場所に応援に行ったら、そこが爆破中心地にだったというね・・・。

もうやりきれない。しかもジェフったら後々彼女との口論で「君の応援に行ったらこのザマだ!」とか言ってしまうんですよ。もう観てて悶絶ですよ(›´ω`‹ )。



と、まあこのような一連のきついシーンを見て僕は

「この映画の副題「ダメな僕だから英雄になれた」じゃなくて「ぼくはダメなのに英雄にされてしまった」が正しいんじゃないの?」

とか途中まで思っていたのですが・・・。

ジェフは彼女に完全に愛想を尽かされて一人で車からも降りれずに地面を這いつくばっている最中に事故の直後のことを思い出すのです。

爆煙のなか意識を取り戻すと自分の足が無残にちぎれてボロボロになっているのが目に入ってくるのですが・・。

しかしジェフは周りにも血まみれでもだえ苦しむ人がいるのを観て、半分パニック状態でありながら助けにやってきた人たちや自分を運ぶレスキュー隊員に

「他のやつを助けろ!」と何度も叫ぶのです。

ここのシーンの挟み込み方は非常に上手くて、映画序盤のテロが起きてからジェフが病院に運び込まれて意識を取り戻すまでのシーンは、彼自身の目線ではなく爆破が起きた時にそれを見ていたエリンの目線や、連絡を受けて病院に駆けつけた両親の目線で語られています。ジェフがテロ事件直後どのような様子だったのかはその回想シーンまで我々観客にはわからないのです。

だから彼がほとんど自業自得で落ちるところまで落ちてからこの事件回想シーンを見せられて、僕は

「ジェフお前ヒーローの心持ってるじゃん!」と思いながら号泣ですよ。彼には一分ですが他者を思いやる心があったんです。

で失意の中、事件当時自分を助けて運んでくれたカルロスという男に会うんですが彼も「イラク戦争で長男が死亡、それを聞いて焼身自殺を図るも失敗。そんな自分を見て病んでしまった次男も自殺してしまった」という輪をかけてヘビーな過去を持っていたのです。

彼は、ジェフを救っている時に息子を救っているような気になれたと告白します。



それからジェフは「自分が頑張る姿を見て本当に誰かを勇気付けられるかもしれない」と考えリハビリに真剣に取り組み出すのです。しばらくしてからレッドソックスの試合の始球式に呼ばれ、リハビリの上半身だけでの水泳などで鍛えた腕で車椅子のままカルロスをキャッチャーにして日ごろの車椅子で見事な投球を見せて場内拍手喝采。しかもその後、弟を戦争で亡くしたという青年が話しかけてきて「勇気をもらった」と言ってくれたのです。

英雄になれたねジェフ!ヽ(TДT)ノ ウワァァァァン!



ラストは義足で何とか歩けるようになったジェフがエリンのところに行って和解するところで終わっていましたよ。



エンドロールで実話物では最近流行の本人画像プラス後日談が流れて、無事赤ちゃんが生まれたと書いてあったので本当に良かったなあと(レッドソックスが優勝したのも全部ジェフのおかげだとか書いてあったのはさすがにどうかと思うけど)。



とまあ、全部ネタバレしてしまいましたが笑、

こういう実話ものは良くできていれば全部話知ってても面白いので無問題m9っ`Д´)ビシッ!



その他、演出もしっかりしてましたよ。

爆破の瞬間が何のタメもなくいきなり起きるのもリアルで怖いし(でもその前にBGMでほんの少しだけ不協和音出してたけど)

包帯を初めて交換するシーンは長回しとジェイクの名演技でマジで痛そう。あそこで足の部分がピンボケしてるのは「その部分は見たくない」というジェフの気持ちを表してるのかなと。

で、やはり主演のジェイク・ギレンホールはさすがの名演。自暴自棄になって荒れるあたりは彼の顔芸が炸裂して非常に真に迫ってましたよ。

その他、ジェイク以外有名な俳優さんはいないんですが、その分本当にアメリカのどこにでもいるような家族や人々の話というのが伝わってきてよかったですな。特に主人公のお母さんの「息子のことは大切に思ってるんだけど絶妙に無神経で自分勝手な感じ」とか上手かったです。



今年の実話物の中ではトップクラスに好きです。