Aya

ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたのAyaのレビュー・感想・評価

3.3
主演俳優自らの初PD、実話が基になった作品として「アイ、トーニャ」との比較も含めて見ました。

デヴィッド・ゴードン・グリーン・・・同じコメディでも「スモーキング・ハイ」は大好きなのに「選挙の勝ち方教えます」はダメだった、という・・・。

要はこの人、脚本家の違いな気がします。
「スモーキング・ハイ」はなんだかんだセスエヴァ作品としていいわけだし。
今回は俳優さんなんですね。

2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件を題材とした作品としては、昨年日本公開されたピーター・バーグの「パトリオット・デイ」を関連作として一緒に見たら、事件自体がどのようなものだったのか、あの場で何が起きていたのか、そして今作でジェイク・ギレンホールが果たした役割の大きさがわかるので、いいかな、と。

今作の主人公、ジェイク・ギレンホールは28歳で狭いアパートで母親と2人暮らし(!)。
コストコで働き、レッドソックスの試合を兄弟か従兄弟かわからんとりあえず身内とビール片手に見ることだけが楽しみの冴えない青年。

そんな彼は元カノ、エリンに未練タラタラ。
ある日彼女がボストンマラソンに出場すると聞いて、応援に行くからディナーを一緒に!と一方的に言い放ちw約束通り、渾身のボードを掲げてゴール地点で彼女を待っていた。
その時だ・・・。

この映画のジェイク・ギレンホールはタイトルには「ダメな僕だからなんとか」って書いてあるけど、ダメってかクソなんですよこいつ。

コストコで働いてるのはまあいいとして、自分のミスなのに後始末の残業できない理由が「俺がビールを握って応援しないとレッドソックスが負ける」やと?!
加えてバーで飲んでるメンツ!従兄弟なんか兄弟なんか最後までよくわからん2人がいるんですけど、叔父さんとかそいつら含めた、そのホワイトトラッシュっぷりな!!

言ってることの下品さ&ポリティカリーコレクト的にアウトなこと!
しかも別に南部とか中西部とかでもなくて、ボストンで2013年ですよ?!
びっくりする、ってかもう爆笑レベルw

しかも、なにが素晴らしいってこいつらの顔、なんですよ!!

バーのメンツは身内なんですけど、そいつらも当たり前に素晴らしい貧乏白人顔だし、何より彼があの歳で同居してる上、過干渉な母親ですよ!!
こんな顔の人よく見つけてきたな!!ぴったりすぎる・・・。
なんかまだ田舎に住んでるお父さんの方がマシな気がしてきた・・・。

この母親終始ダメでw
元々アル中で、車椅子生活になったジェイク・ギレンホールのために住居を2階から1階に引っ越したりとかもしないし、介護の知識もないし勉強しないし、事故後も態度が変わらないてかアルコールの量増えてね?!

そりゃ大切な息子があんな目にあったんだから、母親としてしんどいでしょうが、本人がもっとしんどいってことが全然わかってない上、それを本人に言っちゃうとか・・・。

でも周りのみんなも病院で足を切断され、なんとか回復に向かおうとしてるジェイク・ギレンホールの隣の待合室で、犯人が射殺されたってニュース見たら一斉にイエーイ!!って歓声が上がるとかもう推して知るべしなんすよね。

でも最初に言った従兄弟か兄弟かわからないマチズモ感溢れるこいつらは、実はすごくいいんです!
そもそもこいつら独立してる時点でジェイク・ギレンホールクソ野郎なんかよりマシなんです!!

時折、お母さんや叔母さんとかのデリカシーのない行為を俯瞰的な眼差しで見てるショットが差し込まれたり、事故後のギレンホールとのふざけ方とかいい意味で事故後も変わらない。
でもきちんと手伝ってくれるんです・・・こいつらはいいんだよ・・・。

もうほんとこんな顔の人たちどこで見つけてきたんだよ!
今年観た映画の中で間違いなく面構えはダントツです!

固執する彼女のタチアナ・マスラニーさんも絶妙に美人、て感じじゃない(褒めてます!味のある田舎の可愛い系)。

ジェイク・ギレンホールは自身より10歳ほど若い役なので若作りはしていて、可愛いのですが、際立つクソ野郎感・・・。
足がなくなったのは彼のせいではないけど、安定した仕事(保険入れてる)してるのに親から独立できないのは彼のせいだし、彼女との関係とかめっさダメだと思う。

なにが一番クソ野郎って、自分のことしか考えてないことなんですよ。

家族や友達、彼女が彼のために頑張ってくれてるのに自分のことしか考えてなくて、あの事件を思い出したくないのもわかるんだけど、彼女があまりにも自分のことしか考えてないジェイク・ギレンホールに対してあるセリフをいうのですが、面と向かって怒られてるのに、全然通じてないんです・・・もうこのバカなんとかしろよ・・・。

で、こいつがやっと改心するシーンが2箇所ほど用意されてるんですが(2箇所ないと改心できないってすごいと思う)、最初の方はすごく辛い話だけど、いいエピソードで。

で、肝心の2箇所目がちょっと・・・「パトリオット・デイ」で顕著だった「どんな辛いことがあっても立ち直れる強さのある俺らアメリカ人最高!」リテラシーが感じられて、こういうのが嫌なんだよなあ、と思いました。

この映画に関しては結構抑え気味ではあるんですけど、やっぱそれ言っちゃいますか、って感じ。

なんか前向きになれなかったり、過去から立ち直れない弱い人間はダメ、みたいな言い方するのほんとやめてもらいたい。

「ボストン・ストロング」「ボストンよ!強くあれ!」という事故後のボストンでテロに屈しないスローガンとして掲げられ、その象徴とされたジェフ・ボーマン氏。

さてさて俳優初PD作品としは・・・「アイ・トーニャ」の方が私は好きです。


日本語字幕:松浦 美奈
Aya

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