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ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれたのmaverickのレビュー・感想・評価

4.8
2013年ボストンマラソンでの爆弾テロで両足を失った男性を描いたドラマ。演じるのはジェイク・ギレンホール。作品毎に自身をがらりと変える圧倒的な演技力は今回も素晴らしい。ごく普通の男を、自身の圧倒的なカリスマ性を抑えて平凡な人間に見えるように演じているのは凄い。ジェイク・ギレンホールを知らない人が観たら、「無名の俳優だけど凄く上手かったね」と言われそうなくらい一般人ぽい。本作の主人公は平凡な男性。日々の暮らしの中で特別なことはない。でも当たり前だけどそこに何かの出来事があり、ドラマがある。地元レッドソックスのチームを応援することに生きがいを持ち、友人たちとバーで楽しみ、別れた恋人に未練を持ち復縁を迫っている。世界で生きている一人一人にそれぞれのドラマがあるのだ。しかしそんな平凡な彼の日常は事件をきっかけに一変する。失った両足、失意、苦しみ、車椅子での生活は想像以上に困難を極める。そしてそれと同時に得たもの、テロに逢い両足を失いながらも懸命に生きるボストンの英雄として扱われ、ニュース番組や記事で大々的に報道される。多くの人からの称賛と応援。彼女ともお互いを支えるパートナーとして復縁を果たす。本作が非常に良く出来た作品なのは、単にテロ事件を描いているわけでなく、シンプルに逆境から這い上がる感動物語になっているわけでもなく、主人公の人間としての心の葛藤が複雑ながらも手に取るように伝わってくる部分。主人公は平凡な人間だが、どちらかといえば冴えないタイプの男だ。彼女には愛想を尽かされて復縁しながらも2回も破局を迎えている。本作は主人公がテロの被害に逢いながらも人間として大きく成長する物語。でもそれは事件直後ではなく、事件によって失ったものと得たもの全てにきちんと向き合った時、彼は本当にもう一度自分の力で前に進もうと決意する。そうした姿が観る人に大きな感動と勇気を与えてくれる。彼がボストンの英雄であるのはそこにある。短いニュースや記事など、彼の一面だけでは伝えきれない素晴らしさが本作には詰まっている。彼の行動を通して我々は知ることが出来る。テロが無惨にも奪うもの。それでも人はそんなものには決して負けない強さもあること。真に素晴らしい映画とはこういうもの。ボストンストロング、原題ストロンガー。強き者を描いた愛に溢れた素晴らしい映画でした!
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