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ピュア 純潔のodyssのレビュー・感想・評価

ピュア 純潔(2010年製作の映画)
3.0
【タイトルがアレだけど内容はまあまあ】

 DVDにて。
 日本では劇場未公開。スウェーデン映画、リサ・ラングセット監督作品、2009年、102分。原題はTill det som ar vackert(美しいものに向かって)。

 邦題が原題と異なるのはもちろん、映画の内容とも合ってないんでアレですけど、見てみたらまあまあの作品でした。もっとも、pureという邦題は英語版のタイトルを借りてきたようなので、いい加減なのは日本人だけではないようで(笑)。

 スウェーデンのイェテボリが舞台。ヒロインのカタリナ(アリシア・ビカンダー)は20歳。以前は男あさりの生活をしていたのですが、モーツァルトの音楽を知ってから生き方を変え、親切なボーイフレンドと同棲しながら働いています。しかし以前からの短気な性格は直らず、職場でケンカをしてしまうことも。母親との関係も必ずしもうまく行っていません。父親はいないようです。

 或る日、彼女はボーイフレンドと一緒にクラシックのコンサートに行きます。モーツァルトのレクイエムを聴くために。

 数日後、カタリナはレクイエムを聴いたコンサートホールに昼間なんとなく足を踏み入れます。中ではオーケストラが練習をしている。ベートーヴェンの第7交響曲の第2楽章。

 ところがそのとき、カタリナはコンサートホールの事務員である中年女性から声をかけられます。「面接に来たの?」と。そうではなかったのですが、そうだと答えた彼女は、やがて仮採用ながらコンサートホールの事務員として雇われます。

 事務員になった彼女はやがてオーケストラの指揮者である中年男と知り合います。彼はカタリナに詩集を貸してくれたり、クラシックの曲の名演奏をディスクで聴かせてくれたりする。やがてふたりは関係を持つのですが・・・

 (ここでベッドシーンになりますが、露出度その他に期待してはいけません。またヒロインはもともと男あさりをしていたわけですし、現時点でもボーイフレンドと同棲しているのですから、指揮者が初めての男というわけではない。邦題がいい加減なのはここからも明らか。もっとも社会的ステイタスの高い指揮者に惹かれた彼女は、そのときにはpureだったと言えるかも知れませんね。)

 恵まれない階層の少女が、モーツァルトを好きになり、クラシックのコンサートホールの事務に偶然採用され、指揮者とも関係してそれまで知らなかった書物や音楽を教えられて・・・・つまり、社会的に上昇していく、というか、いきそうになる話です。

 しかし指揮者には妻子がいるので、やがて当然の成り行きが訪れます。

 その後の展開が面白いのですが、あとは作品を見て下さい。展開はヒロインにとって都合が良すぎる感じがしますけれど、女性監督は恵まれない階層の女の子への応援歌としてこの映画を作ったのかも知れません。

 ただ、筋書きのご都合主義は別にしても、最初はヒロインの「モーツァルトのが好きになって男あさりをやめた」というモノローグから始まるのに、流れているのはモーツァルトではなく、マスネの「タイスの瞑想曲」ですし、途中のシーンでヒロインが市立図書館で「リヒテルの弾いたラフマニノフ」と司書に注文を出すのに、その後流れるのはモーツァルトのクラリネット協奏曲だったりして、ややちぐはぐな感じも残ります。
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