emily

正しい人間のemilyのレビュー・感想・評価

正しい人間(2016年製作の映画)
3.6
仕事も家庭も上手くいっておらず、人生に行き詰まっているエディ。夜の街で暴行にあり大怪我で入院する。何日か前に見かけたアハメッドという男が怪しく映り、根拠のない無罪の男を犯人だと断言してしまう。怪我により家族ともやり直しのチャンスをもらい、仕事も決まり自体は良くなってくる。しかし罪悪感に蝕まれ思わぬ行動へでていく。

ガラス越しに夜のネオンが浮かびあがり、幻想的な美しい光が何層にも重なる。その中に対照的に佇むエディからは負のオーラが嫌という程漂い、不穏な空気の渦に包み込まれる。ある事件と勝手な嘘が、誰かの人生を壊し、その上でエディの人生はうまく行き始める。

一方のアハメッドの幸せ勝りの日々、結婚間近からの転落。しかし誰かの幸せを壊して成り立つ幸せなんてない。皮肉にも生まれ持っての悪人ではないため、罪悪感に苛まれ、見事に精神バランスを崩していく。窓越しに浮かび上がるネオンと向かいのアパルトマン。幸せと絶望が共存する一枚のガラス越しの世界。悪と善はいつでも背中合わせで、その悲劇は誰にでも起こりゆるし、崩れたものは立て直すより先に、どんどん音を立てて崩れていくのだ。

一度は愛し合った夫婦だが、根本的なものは簡単には変わらない。上部を繕っても化けの皮は、いつか剥がれる。壊れるのは時間の問題なのだ。

緊迫感のある家族の距離感、ひっくり返され、手に入れたものをその何倍ものチカラで不可能に壊され、何もなくなった時、男は怖いものが何一つなくなる。焦点のあってないエディの目の先に広がる光景。見ているようで何もない見えてない彼の視野で"世界"をみる。そうなった時の動物的行動は理解不可能でありながら、非現実的には映らない。なぜならその可能性は誰にでもあるから。。
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