emily

サマーフィーリングのemilyのレビュー・感想・評価

サマーフィーリング(2016年製作の映画)
4.0
 30歳の恋人のサシャがある日突然亡くなり、アメリカ人の翻訳家でベルリンに暮らすロレンスと、夫とは別居状態になってしまう一人の子供がいるパリで暮らすゾエの重い不在を3年の夏を隔てて描く。ベルリン、パリ、ニューヨークと時の流れの中で、それぞれの光を見つけ出していく。

 いつもの朝、いつもの公園、いつもの緑を抜けてアートセンターに行くサシャ、はじめはサシャの目線でいつもの日常が描かれ、突如亡くなってからは、カメラはロレンスの目線とゾエの目線をエピソードに分けてつづっていく。

 ベルリン、パリ、ニューヨーク、サシャの両親が住んでるアヌシー湖の湖畔、緑が美しく壮大な公園や、自然を背景に、夜の街、昼の街、時の流れの中で何気ない会話を見せる。心の隙間を埋めるように街をあるき、変わらない景色、変わらない空気が流れる中で、確実に時が流れていくのを感じさせる。何気ない隙間に越えられない不在の大きさが渦を巻くが、決して暗いトーンにはなってない。それよりも、それでも流れていく時やそれでも景色は同じように微笑み、美しいものを美しいと描写し、それを感じながら悲しみを抱えて生きていく、二人と周りの人々を描いている。

 夫と別居中のゾエには、いつもそばにいてくれる息子がいて、ホテルの仕事もある。ロレンソにはいつでも何も言わずそばにいてくれる、姉が居て、ニューヨークに戻ってからは出会いもある。二人とも一人ではない。大事な人はいつもそばにいて、ただ見守ってくれているのだ。サシャの不在は埋まらない。埋められる訳がないのだ。その悲しみをしっかり背負って生きていくしかない。しかし悲しみの渦に包まれてる自分を常にそばで見てる人がいる。自分が悲しければ、その人も悲しい。だからその悲しみを抱えて前向いて歩いて行くしかないのだ。

 また同じように悲しみを抱え生きているロレンスとゾエは一年に一度再会することで、悲しみを思い出し認識しながら、お互いの生を感じることで、不在の悲しみを上塗りしていく。お互いが生きて頑張ってる姿を、お互いの一年を言葉から感じることで、明日への希望へつながっていく。そうして隣には大事な人が居る。失って失って、大事なものがどんどん減っていく中で、それでも残ってる大事なものを大切に生きていくしかない・・
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