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サマーフィーリングのmaのネタバレレビュー・内容・結末

サマーフィーリング(2016年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

ベルリン、パリ、NYの夏。
油絵の具みたいなターコイズブルーの夏の空。

誰かを失って心にぽっかり空いた穴は簡単には埋まらない。
ベッドは片側に寄って眠る。半分より向こう側はかつてサシャが眠っていた場所だから。
ベルリンにはサシャのスペースが多すぎる。彼女のいたスペースを形作るものは沢山あるのに、そこには彼女だけがいない。
だからロレンスはベルリンを去った。

何度夏を繰り返しても彼らはそれぞれ乗り越えることができない。でも人間の記憶というのは薄情なもので、どうしても忘れられなかったことでも時間とともに色褪せていく。
かつてホテルで撮った“ポルノ写真”も、いつかはボロボロになって跡形もなくなるだろう。

結局ロレンスはサシャの死を乗り越えられたのだろうか? 私にはそうは思えない。
サシャの死は彼にとって悲しい出来事のままだろう。ロレンスだけではなく、ゾエや両親にとっても。
それでも海辺のラストシーンでロレンスはイーダを穏やかに見つめていた。
喪失は乗り越えなくても良い。その喪失感も全部含めて彼自身であるのだし、喪失感を抱えているとしても生きていくこと、幸せになることは出来るのだ。
そういう優しいラストシーンだった。
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