回想シーンでご飯3杯いける

ブルーハーツが聴こえるの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ブルーハーツが聴こえる(2016年製作の映画)
2.7
1995年に解散した日本のロックバンドTHE BLUE HEARTSの名曲6曲を題材に、気鋭の監督6人が作った短編を集めたオムニバス作品。

企画はとても面白いのだが、6作品を完全にチーム分けして競わせるような体制で作ったのだろうか、変に気をてらった作品が2つ混ざっており、それが何故か冒頭の2作として選ばれてしまった模様。1本目「ハンマー(48億のブルース)」は東京03の角田も出演するコント仕立て、2本目「人にやさしく」は西村雅彦を始めメジャー俳優が出演する宇宙船パニックSFという、ブルーハーツの音楽とは全く結びつかない世界観。え?作った人、本当にブルーハーツの曲を聞きました?

3本目の「ラブレター」は淡い初恋の想いを胸に斎藤工が高校時代にタイムスリップするストーリー。ここからの4本は、ブルーハーツのメンバーやファンが共有しているであろう'70~'80年代のノスタルジーや、東日本大震災での喪失感等をテーマにした良作が続く。先述の「ラブレター」や、福島原発事故で失った家族の平和を、行方不明になった愛犬の思い出に重ねた「1001のバイオリン」は特に良かった。「1001の~」はブルーハーツ後期の作品であり、既に子供が高校生になった父親を主人公に据えたストーリーと見事にハマっている。

なお、上映時間は164分と長く、各篇に3分のエンドロールと、最後に5分の総合エンドロールが付く。つまりエンドロールだけで合計23分ある計算になり、仕方が無い部分もあるのだろうが、冒頭の2作品といい、どこか作り手の気負いが空回りしている印象が残ってしまう(例えばエンドロールの背景にブルーハーツの写真をスライド形式で見せる等すれば印象も大きく変わったはず)。良い作品も含まれるだけにもったいないと感じる。