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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのkamicoのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

パイを食べる、ひたすら食べる。人は穴を埋めたがるというけれど、空虚感を何かで埋めようと飲み込み続けるシーンは、身に覚えがあり、それでいて誰が観てもきっと印象的なのだと思う。べつに、空腹を埋めていたわけじゃない。そういう気分の時はお腹って空かないから。

「もう来ないみたい」といって消えていったゴーストがいた。あんなふうに昇華されていくとは思わなかったからショッキングだった。でも、待つ必要がなくなったということは、そこにい続ける意味もなくなり、吹っ切れたようなものだ。名残惜しいかといえば、決してそうではなかった。

時間を彷徨い続けた先で、望んだものを手にした瞬間、涙の再開がなかったのが良かった。もし、あの紙切れを読んでいたら作品の空気も大きく変わっていたはずだから。無い物ねだりで、それが観てみたくもなったし、それを望んでわたしもホッとしたかったけれどね。

名前のない、あるけれどイニシャル?で収まっていた登場人物たち。もしあの2人に名前があったとしたら、仮にカルロスとメリだとしたら、2人の日常の描写が物足りなく感じた気がする。

この映画、観て良かったし気持ちがざわざわとしたけれど、泣けなかった。泣こうと思えば、思い出の取り壊しや、彼女の新しい人生を目の当たりにしたときの悲しみに近い嫉妬シーン、未来の都市風景、タイミングはあったのに、それでも泣けなかった。

たぶん、彼女がそれなりの時間を経て自分のいない新しい人生を歩み始める様子を見て、わたしまで吹っ切れたからだと思う。

レディ バード見損ねたのが惜しい。A24の空気感を掴み損ねてしまったようだ。

それとね、幽霊が人の姿のまま現れるドラマや映画はたくさん観てきたけれど、表情の見えないシーツ姿でそこにい続けてくれるゴーストたち、セリフのないあんな立ち居振る舞い、しようとしてもなかなかできないよ。
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