黒汐楓

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーの黒汐楓のレビュー・感想・評価

3.0
ただ切なくて優しい映画かと思いきや、予想に反してホラー要素やクスりとするシュールなユーモアもあって、想像を超えた恒久的でスケールの大きなストーリー。良い意味でがっつり裏切られた映画。
心霊現象を霊の視点で見るというのはなかなか新鮮。
最初はゴーストがただのシーツ被った人間にしか見えなくてシュールだなあと思っていたのだけど、姿は何も変わらないのに見ていくうちに人間味が薄れていったのが不思議で面白かった。
前半は、静かで何も起こらないワンシーンが、いつまで続くのかと焦れてしまうくらい延々と流れる事が多くて、最後まで耐えられるかしらと不安になったけれど、そのやりすぎなくらいの「静」の時間のおかげで、中盤からの「動」がより一層際立つ。
もう今回の人生はこの辺でいいかなーなんて無意識的に思う事が増えた日々だったのだけど、観ている途中から心底死ぬ事が恐ろしくなった。
魂になってもなおそこには感情があって、小さな事に小さく腹を立てたり、欲しいものに一心不乱になったりする。
起こる事はすべて些細な事で、揺れ動く感情も細やか。それが何十年、何百年、何千年、何億年とあって、そしてその先にあるのが今だ。
とても良い映画だったけど、自宅での鑑賞だったら間違いなく前半でリタイアしてる。映画館に観に来て良かった。
黒汐楓

黒汐楓