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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのtouchのレビュー・感想・評価

4.0
"いつかその場所に戻った時 私の一部が待っていてくれる"
* * *
愛する人を残して先立った者と残された者
物語のスポットライトが当たるのは
いつも残された者ばかり
では、残してしまった者はどうなる?
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時間の概念をふっと飛び越える映画的な演出、幽霊の時間軸を疑似体験する映像編集の工夫が傑出している。
切なくも美しい、記憶の輪廻を旅する物語。
尖った作品性にA24らしさを強く感じた。
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「この夜がずっと続けばいいのに」と願っても
パーティーはいつかお開きになる。
「この場所でずっと待ってる」と誓っても
そんな場所はいつかはなくなってしまう。
形あるものはいずれ消え去り、人はいつか死ぬ。
全ては無に帰す。
それでも人は必死に生きて、その証を残そうとする。
"君は何のためにどう生きるのか"
諦観のような哲学的な問いを投げかける。
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台詞での説明は極力省き、囁くように静謐な画で見せる。
幽玄なオカルト・ファンタジーでありつつ、どこか高次元なSF作品にも思える。
本作に『インター・ステラー』を重ねる人が多いのも頷ける。
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固定カメラによるフルショットやスローなカメラワークの多用により、わざと画の生気を殺している印象。
また、サイレント映画でよく用いられたというテレビ風スタンダードサイズ(1.33:1)の映像アスペクト比によって、フレーム越しに世界を覗き見ているような感覚に陥る。
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思えば"映画を観ている観客の立場"は、本作におけるゴーストが置かれている状況に限りなく近い。
やきもきハラハラしながらも、画の中の世界に干渉することはできず
私たちはただ指をくわえて見ていることしかできないのだ。
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そうして観客自らもメタ的に"ゴースト"になることで、より一層共感が高まっていく。
「もし自分が死んだら?その後はどうなる?」
そんな問いが自然と脳裏に浮かぶのである。
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本作のハイライトのひとつであろう、体感時間を掌握されるようなルーニー・マーラの長回しシーン。
悲壮感にとっぷり浸らせてくれて個人的には好みだったが
あのシーンから孤独や不安・無力感・やり場のない怒りを嗅ぎとるか
あるいは意味不明で退屈、冗長なシーンに感じるか
特に評価が分かれるポイントになるだろう。
総じて、本作は受け取り方を観客の感性に大きく委ねる作品だったと思う。
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この作品の為にあつらえたような劇中曲
『I Get Overwhelmed』がまた秀逸。
これはしばらくヘビロテすることになりそう。
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Is my lover there?
Are we breakin up?
Did she find someone else?
And leave me alone?
Alone
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僕の愛する人はそこにいるの?
僕らはもう終わりなの?
彼女は他の誰かと出会ったの?
そうして僕をひとりぼっちにするの?
ひとりぼっちに…
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