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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのしおりのレビュー・感想・評価

4.1
ポルターガイスト現象

お化け=怖い、という方程式は子供のみならず多くの人の中で成り立っていると思う。実際、ホラー映画を全く観ることが出来ない私も超常現象は腰が引けるほど怖い。

そんな現象、俗に言うポルターガイスト現象をお化けの観点から観ることが出来る。そんな映画が今作「A Ghost Story」だ。

主人公の人組の夫婦の名前は一切出てこない。エンドロールで気づいたが、女の方はM、男の方はCという役名がついていた。劇中でもしかしたら出てきていたかもしれないが、私は気づかなかった。

2人は至って普通の夫婦。仕事に勤しみ、2人の平屋のマイホームで仲睦まじく暮らす日々。
しかし、そんな当たり前のような生活は長くは続かない。

なんでもない日、突然事故によって命を落とすC。事故現場は家の近くだった。

悲しみに暮れるMは病院で夫の死亡確認をするが、そのあと画面に映し出されるのは遺体から幽体離脱したシーツをかぶった幽霊。

そうです、この映画は夫をなくした妻と、そんな妻を見守る幽霊姿の夫の話なのです。。。


今作は「静」と「動」のコントラストが激しく非常に変わった作品。

まずは前半の「静」の部分から。夫婦の日常がほぼセリフなしで映し出されます。
しかも長回しの手法が多く、2人の家はすごく長い間映し出されます。
事故前と事故後に同じように自宅が映し出されるのですが、対比の仕方が絶妙でして。これは観ていただかないと分からないところですが、事故の虚しさが際立つ仕掛けに溢れています。

次に観た人誰もが何かしら考えてしまう「ルーニー・マーラがパイを食べるシーン」について。
ここの長回しは破格の長さ。体感時間はぶっちゃけ2時間。
映画を普段見ない人が「退屈」と思ってしまいがちな長さです。
私も最初はこのシーンの意味がよく分からなかったですが、2日ほど頭の片隅で考えてるうちにこのシーンの必要性がわかったような気がします。
大切な人が亡くなって、心にぽっかりと穴が空いている。言葉にならないような悲しさ、悔しさが詰まってるルーニー・マーラの演技でした。
ただ単に「パイを食べているだけ」と捉えるだけではもったいないシーンです。

そして後半の「動」では、幽霊にフォーカスをあてていました。まさに「A Ghost
Story(幽霊の物語)」でした。
また、後半部は特に音を効果的に使っていると思いました。
幽霊たるもの、声は出しませんが行動はできます(この映画の中では)。そして人間はそれを音でなんとなく察すことが出来ますね。
だからこそ音にこだわっている映画なんだろうなと感じました。

幽霊がいろいろと行動しますが、それを全部我々人間は「ポルターガイスト」という言葉で一括りにし、怖がっているのかもしれないですね…観た後にこう考えるとすごく儚い気持ちになります…

賛否が分かれる映画ではあると思いますが、どこか懐かしい気分にさせてくれる素敵な映画でした。
幽霊への固定観念が変わりました。