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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのnaoのレビュー・感想・評価

4.4

交通事故で亡くなった男が幽霊になって自分の家で愛する女性を見守り、彼女が去った後もその痕跡を求め続ける

たったそれだけなのに、約1時間半のなかで魂の奥深くまで降りてゆくような不思議な感覚を味わわせてくれる

この作品を鑑賞している間、夢を見ている時のような眠ったまま現実世界と関わるぼんやりとしてとりとめもない感覚が身体を包み、ゆったりとしたカメラワークが荘厳な雰囲気を醸し出す
どのアングルから切り取った映像も1点の絵画のようで、長回しの多用と相まって一つ一つの場面が忘れ難い印象を残します

この作品は、自分が何の為に生きて、何を残せるのか啓示的、詩的に問いかけてくる
自分がこの世から居なくなる時、自分が生きた意味はあったのか

答えなんて簡単には出てこない

ただ、夫婦の愛も、家族で囲んだ食卓も、ささやかに祝ったクリスマスも、踊りまくったパーティも、歴史に残るようなことではないけれど、共に過ごした人の記憶に残り、過去にも未来にも続いていく

そう考えると、たとえ目に見えなくとも人は何かしらこの世にかすかな波紋を残している
そのシンプルなメッセージに気づいた時、物悲しいけど温かい涙が流れてました


また月日が経ったらもう一度見て、新たなものを感じたい…そんな作品です
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