砂

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーの砂のレビュー・感想・評価

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タイトルとビジュアルの通り、どこか古めかしさのある幽霊物語。

「ゴースト」のように恋人を見守ることに始まり、予想をいい意味で裏切られる展開を見せる。
ただそこにいるだけ(ただ物には触れるのがまた不思議)の幽霊をCGではなく古式ゆかしい白装束で描くという、一周回って珍しい…という形容詞がまさか直球でそういうこと?…と書いてて気づくような素朴ながらよく計算された映画である。

古いフィルムのようにコントラストを落とした絵画的な静画が美しく、全体的に抑制の効いたトーンで生活音の軋みなどが非常に効果的に寂寥を感じさせる。
演出面が巧みで、説明的なセリフはない。主人公亡き後の彼女が一切涙を見せず嗚咽や泣き言もみせないのに、深い喪失を演技や長回し、音で表現していることである。また、時間経過が人間のそれとは次第に変わっていく様も、家の中で入れ替わる人々やワンカットでの景色や動線の変化で見せる。ベートーヴェンの話はちょっと核となる部分をしゃべり過ぎじゃないかって気もしたが、静かな作品のアクセントになっていた。オバケ同士の交流もなんだかチャーミングだ。メキシコ家族はちょっとかわいそうだがオバケだってさみしくもなるのだろう。

4:3(スタンダードサイズ)の、昔のブラウン管テレビのような懐かしい比率もまるで「覗いている」ような気分になるのだが、それもまた意味を持っていたというニクい仕様である(だから、最初の夜の長回しが意味を持つ)。尺もちょうどいいし、終わり方も良かった。いい意味で「売れるインディペンデント系映画」の配給元であるA24は本当に絶妙なチョイスするなと改めて感心した。
砂