矢吹健を称える会

夜明け告げるルーのうたの矢吹健を称える会のネタバレレビュー・内容・結末

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

 まあ、ルーたんのぐうかわぶりに萌え焦がれ転げのたうちまわらんばかりに楽しんだので別に良いんですが、物語らしきものが動き始めるとだんだんテンションが下がってきたのである。

 予告編の時点でめっちゃポニョやんけと思っていた。実際見てみるとさらに、半人半獣ということで細田守を、港町の危機ということで『君の名は。』を、言葉にできない思いを歌に託すとかいう設定で『ここさけ』を、あとトム・ムーア『ソング・オブ・ザ・シー』など最近の作品をいくつも思い出しつつも、湯浅監督の個性は強烈に顕出している。特にダンス・シーンの無茶なグルーヴ感や(『夜は短し恋せよ乙女』とほぼ同じなのではとも思うが……ちなみにあちらのほうが制作順としては後らしいですが)人魚犬・人魚親などのキッチュな造形は突出した魅力と思う。

 しかし、どうですか。なんか青年が成長する話らしいんだけども。よくわかんねえ……成長したか? "歌うたいのバラッド"を唄って、人として一歩成長……わからん。本当は唄いたかったけど唄ってなかったということなんでしょうか。その後のエンディングでめちゃくちゃ早口の長台詞で諸問題の解決を父親に報告していましたが、それまであれだけ慎ましく示唆していた母親との不和を、なんの工夫もなく台詞で処理してしまっていいのだろうか。他のキャラもなんだか奥行きを欠いたキャラクターで、どうにもつまらない。あと事態が切迫しているらしいんだけども、スペクタクルはあってもサスペンスがないと思う。湯浅監督の作品は正直いってあまり見ていないのだが、オーソドックスなドラマの演出は不慣れなのだろうか。
 正直物語は要らないと思うくらい他の魅力は突出しているのだから、惜しいと思う。