図師雪鷹

夜明け告げるルーのうたの図師雪鷹のレビュー・感想・評価

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
4.5
湯浅政明監督のオリジナルの長編アニメーション映画。
オープニングでこれほど鳥肌が立つ映画は貴重。

舞台は漁業に支えられている日無町。
そこには人魚伝説があり、人々は彼らの存在を恐れていた。
だが、それ以外は特に何も変わりばえのない普通の田舎町。
主人公、カイは中学3年生だというのに、行きたい高校さえも決めていない。町のシンボルである"お陰岩" に光を阻められているように静かに暮らしていた。
だが、彼には秘めた趣味があった。音楽である。自作の打ち込みを動画サイトに上げたとき、クラスメイトの男女にそれがばれ、彼らのバンドに誘われたカイ。
最初は断ったカイだったが、彼らがこっそり "人魚島" というお陰岩の外側にある島でこっそりバンド練習していることを聞き、つまらない日常に終止符を打つかのようにバンド練習に参加する。
しかし、人との付き合い方があまりうまくないカイ。技術的な指摘をベース・ボーカルの女の子に指摘したことがきっかけでバンド練習は途切れてしまう。
だが、その時、歌が聞こえた。しかもとても楽しそうな歌声。カイは何故かその歌声を聞くと踊ってしまう。
ふと海の方を見ると、赤く小さい生き物が愉快そうに跳ねていた。
カイの頭を規則正しく回っていた歯車は零れ落ちた。予期せぬ非日常が始まる予感にカイは目を大きく開けるばかりだった…



イメージの1000倍楽しく明るい映画だった!!
ポスターを見る限りシリアスな映画だと感じたが、そういうことはなく、むしろアニメなんだから楽しく歌って踊りましょう!っていう映画で、思わず目からウロコ。

ルーを始めとする人魚たちは歌が大好き。ルーの場合は音楽を聞くと尻尾が足に変わり、自由を求めて愉快に動く。
このシーンを見た時点で私は魅せられた。



この映画は、幼い子供たちが絵に描くような夢溢れる「人間と "他者" の関わり合い・助け合い」を描いていて非常に心地が良かった。将来の不安さえも考えず、今を生きることがただひたすら楽しいと感じているような躍動感があった。こんな映画はなかなかない。

今までアニメの自由さを作品に落とし込んできたであろう湯浅監督にとって、ベストマッチな題材だと心から感じた。

個人的にはコバンザメを引き連れたホオジロザメの姿をしているルーのパパが一番好き笑
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