夜明け告げるルーのうたの作品情報・感想・評価 - 120ページ目

夜明け告げるルーのうた2017年製作の映画)

上映日:2017年05月19日

製作国:

上映時間:113分

3.9

あらすじ

寂れた漁港の町・日無町(ひなしちょう)に住む中学生の少年・カイは、父親と日傘職人の祖父との3人で暮らしている。もともとは東京に住んでいたが、両親の離婚によって父と母の故郷である日無町に居を移したのだ。父や母に対する複雑な想いを口にできず、鬱屈した気持ちを抱えたまま学校生活にも後ろ向きのカイ。唯一の心の拠り所は、自ら作曲した音楽をネットにアップすることだった。 ある日、クラスメイトの国男と遊歩に…

寂れた漁港の町・日無町(ひなしちょう)に住む中学生の少年・カイは、父親と日傘職人の祖父との3人で暮らしている。もともとは東京に住んでいたが、両親の離婚によって父と母の故郷である日無町に居を移したのだ。父や母に対する複雑な想いを口にできず、鬱屈した気持ちを抱えたまま学校生活にも後ろ向きのカイ。唯一の心の拠り所は、自ら作曲した音楽をネットにアップすることだった。 ある日、クラスメイトの国男と遊歩に、彼らが組んでいるバンド「セイレーン」に入らないかと誘われる。しぶしぶ練習場所である人魚島に行くと、人魚の少女・ルーが3人の前に現れた。楽しそうに歌い、無邪気に踊るルー。カイは、そんなルーと日々行動を共にすることで、少しずつ自分の気持ちを口に出せるようになっていく。しかし、古来より日無町では、人魚は災いをもたらす存在。ふとしたことから、ルーと町の住人たちとの間に大きな溝が生まれてしまう。そして訪れる町の危機。カイは心からの叫びで町を救うことができるのだろうか?

「夜明け告げるルーのうた」に投稿された感想・評価

湯浅作品としか言いようの無いフレッシュで瑞々しい映像表現の数々、、スクリーンに映るすべてがかわいい。
傑作。大傑作。湯浅ワールドの最高到達点。今年のアニメーション映画と言わず、邦画を代表する作品になるだろう。ここまで満足した映画体験はひさびさだ。

映画の上映が終わったあと、周りで観ていた人たちが口々に、よかった!と言っていたのが印象深い。それはストーリーの面白さ(個人的には、3・11を踏まえた崖の上のポニョ、といった作品であった)でもあるだろうし、湯浅監督の特徴的な絵作りと人魚という題材の相性のよさもあるだろう。しかし物語の軸となっている伝統的な「出会いと別れの物語」というテーマが、最後までしっかりと安定していることが一番大きかったのではないだろうか。

本編に目を向けると、まずはタイトルが出てくるまでの掴みまでの部分の、絵の素晴らしさと音楽、横移動を使用した撮影の巧みさが素晴らしい。ここまでの見事さは、ラ・ラ・ランドの冒頭シーンに匹敵する。そこからの青春ストーリーと、舞台である日無町の閉塞感と生ぬるい幸せ、そして主人公カイとルーの出会い、そしてそこから怒濤の展開も全く隙がない。とくに、ルーとカイの最初の出会いのシーンは特筆されるべきだろう。出会いのファンタジックさと、やはり夢だったのではないか?と思った時に、紛れもなく現実の出来事だったのだと知らせてくれる、「踏んだ畳から水が滲み出る」演出が実に見事。

衰退の一途をたどる港町の行き詰まり感などのシリアスな演出が的確でありつつ、ルーの父親のユーモラスな姿とその登場シーンが心に残る。とくに「魚の超ハイスピード活け〆シーン」は爆笑間違いなし!そうした暖かな場面がしっかり描かれているからこそ、ルーの父親の後半の「ある行動」は、ひたすら熱くドラマチックに加速する。そして同時に、主人公3人+ルーのそれぞれの「親子の物語」としての側面も鮮やかに浮かび上がる。そしてそれに説得力を持たせる、脇役キャラまでしっかりと愛情を持って描かれた脚本の緻密さも印象的だ。

ラストは主人公3人のうちの1人である遊歩のある言葉で締められる。それは目に見える景色をただ言っただけのような、しかしここまで観てきた観客にはそれ以上の深みを持って染み込んでいく、本当に素晴らしい一言だ。主人公たちは、これからもきっと力強く歩き続けていくだろう。そう信じさせてくれる完璧なラストだった。

上映館は決して多くはないが、大画面で観てこそより深く心に届く作品だ。傑作である。
ルーの親父さんの爆走シーンに感動、ジジイとババアの短いサイドストーリーに感動、それ以外はうーん。

ルーと主人公グループたちのバンドがどうたらこうたらに興味をそそられないのが辛かった。
ヌルッヌルのドラッギーな湯浅作画を見たい人にはオススメです。
tatari

tatariの感想・評価

2.8
いつもはぶっ飛んだ湯浅ワールドを楽しんでいるけど、「主人公の性格がさくっと最初に変わる」「都市伝説的で畏怖の存在の人魚をあっさり人間たちが信じる」「日光に弱いという人魚設定が早々とどうでもよくなる」etcな粗の多い設定が今回はどうしてもストーリー上のノイズとなって、全然楽しめなかった。アニメーション自体はもちろんよいけど、どこかで「でもこれ結局ルーがポニョっぽい」という雑念が途切れない始末。
 難しい。
 賞賛するには問題が多すぎるし、酷評するほどは嫌いになれないというか。
 
 とはいえ、具体的に何か書こうとすると批判的にならざるを得ない。やはり問題は脚本であり、叫び、駆けるティーンなどの運動や音楽の力で強引にカタルシスに達しようとするパターンである。よくみると周到な伏線もあるのだが、『マインド・ゲーム』みたいに気づいたとき感動するようなストーリーやキャラの要所には繋がっていない(そのうえ幾つかは説明くさい)。肝心なところは、エモーションで誤魔化している印象を抱く。そうなると、成功はもう受け手に委ねられており、作中の人びとのように我々も踊れるかどうかということになる。GOTG2のセリフにあったように、踊れる奴と踊れない奴がいるというだけ。
 
 要するに、行き当たりばったりな行動や展開、あるいは設定そのものに「なんでそうなの?」と疑問を発する思考のプロセス2を、登場人物の溢れるエモ・画面の躍動感・音楽の力でプロセス1を刺激して押し流させる、ということだ。実際、ルーパパの暴走、慈悲あふれる人魚たち、カイの熱唱(カメラの回り込み)などはかなりエモい。
 ただ、この作品の場合は下準備から失敗しているので、このとりあえず感動しとけ的ノリについていけない率は低くないと思われる。序盤、たしかにタイトルロゴまではかなり期待が上がったが、そのあと1日でいろいろと出来事を圧縮したために、エモーションを解き放つための下積みができていない。とくに、主人公にまったく感情移入できないことが致命傷である。彼が人魚を見ていきなりテンション上がって、おまけに惚れちゃって、途中から再びふてくされている、その心の動きがちゃんと伝わってこない。
 中盤になると、いつの間にか日にちが飛んでいるのも良くない。まるで編集を入れまくったかのようだ。ほか、概してシーンの繋ぎ方も、一瞬とはいえ思考を要することがあった。実のところ、こういう不親切さは湯浅監督にはよくある気がする。(その点、『君の名は。』が採用したダイジェストは常套手段ではあるが、常套になるだけの合理性はある。)
 主人公にくらべるとサイド2名のほうがはるかに、リアクションなどで何を考えているのか分かりやすく、キャラとして魅力的でもあった。悪役があそこまで人魚を憎む感情も説明不足であり、後半の展開には「なんでこんなことになってんだっけ?」と思ってしまった。ここも彼の表情の迫力で押し切ろうとしている感が強い。なお、ルーや、特にパパに至ってはまったくもって理解不能。
 
 冒頭から強調されまくるSNSカルチャーの意味もつかめなかった。物語上でもSNSの役割は重要だし、商業主義とも絡みついて、ルーを出汁に観光業で儲けようとする遊歩の祖父も出てくる。こういう商業主義というか汚いオッサンも湯浅作品の定番要素だけど、今回はこの点について特にコメントもなく、オッサンが悪役になるわけでもなく、消化不良といいますか。別に社会派やれとは言わないが、そういう要素を作中に持ち込んだ以上は何らかのオチが求められるのは自然なことだろう。また、こういうSNSとか金儲けとか衰退する田舎の様子とかいった妙に現実的なところと、人魚みても面白がるだけの人びとのような非現実的なところが平然と同居していて、「世界の一貫性」という意味でのリアリティを結果的に損なっているといえる。
 強いて図式化すれば、エゴまみれの人間たちと、無償の愛に生きる人魚たちとの対比、ということになる。エゴイズムは大人たちに限定されず中学生たちにもあるわけだが、主人公の「自分のことしか考えていなかった」という反省に対しても、「何のこっちゃ」という感じ。これも結局、「世界が嫌い」な自分と「みんな仲良し」なルーという、考え方の違いが彼の心を再び閉ざしているという点がちゃんと強調されていないから。しかも、その反省がいかにもたらされたかも不明である。さらに私的な趣味をいえば、こうした無償の愛を肯定的に描くこと自体が不快っちゃ不快である。これも湯浅作品によくあることだが。
 
 脚本に加えて、アニメーションもまた没入を阻害するほうに働くことが多い。初期カートゥーンの原始性は、現在では観客とスクリーンのあいだに批評的距離を生むように作用する。そのうえ、湯浅は変幻自在な線の動きをあまり制約しないので、ますます自由奔放で純粋な表象へと向かっていくが、それがストーリーの筋を踏み外すとさすがに置き去りを食らう。同様に、描き込みの乏しさや極端にマンガ的な表情なども、劇場用作品に期待されるリッチさに鑑みてどうなのか。先月の『夜は短し~』に比べると、画面の躍動感はスクリーンに見合うものだったが、没入させられたシーンは「湯浅度」が低かったと思う。
 
 けっきょく酷評になってしまった。点数とちぐはぐだが、観ているときは俺もそれなりに押し流されて踊ったので。アニメってこういうところがズルいよね。だから好きなんだけど。
 それと、主人公の描写について文句を言い続けてきたが、彼の気分が安定しないのは狙っているのかもしれない。夜のデートでは顔がだいぶ違うし、リズムの取り方とか、そういうところにも不安定さを表わしているように感じた。
 最後にひとつ。ポスターが暗すぎるし、書かれたキャッチコピーは最悪だ。せっかく監督が本人なりに市場に歩み寄ってみせたのに、マーケティング感覚のかけらもない連中のせいで届かないのでは浮かばれない。お子さんも観れますよと全力でアピールしているフランスのポスターを見習え。
湯浅監督らしいアニメでしか表現できない様な作品、音楽シーンのアニメーションは見ていて楽しかった。

ただ惜しいのは、あの女の行動や祟り関係等、色々と細かい所が気になってどうもスッキリしなかった。

きっちりした完璧な脚本を求めてるわけでは無く、細かい粗なんて気にならなくなる様な勢いが欲しかった。

その辺りの勢いや強引さは『君の名は』や『夜は短かし歩けよ乙女』の方が上手だったと思う。

人魚嫌いのババアの最後のセリフ、あれは観客全員が思った事だと思うけど、あえて説明しないって事なんだろうか。
BS2011

BS2011の感想・評価

3.1
全体的には、なんか普通な感じ。普通じゃないとこもいっぱいあってテンション高いシーンやストーリーも面白いのだけど・・・
航

航の感想・評価

4.5
「夜は短かし歩けよ乙女」を観て間もないけど、湯浅監督の新作。ポニョっぽいなと思って観てたら、こちらの方が遥かに良かった。
テンション高めで踊るシーンが楽しすぎる。それぞれ抱えている事情をさりげなく描き、そしてそれをどう昇華するか。笑って楽しくて切ない。いろんな感情を味わえる映画。斉藤和義「歌うたいのバラッド」が良すぎ(ノ_<)
てた

てたの感想・評価

5.0

このレビューはネタバレを含みます

こんなへったくそな歌で涙ぐむとは思いませんでした。
今、歌うたいのバラッドがずっとループで流れています。

天才にふさわしき湯浅監督がこんなにツボを刺激してくれるとは。
つい最近の夜は短し、とずいぶん導入が似ておりました。
あちらは現実においてかなり超越した半径5メートルから吹っ飛んだ楽しい映画で、こちらは自分の世界の外側から85センチまでノックしてくるような、なんとも対比してしまいたくなる2作でした。

一番気にしてたのが、巨人、篠原の声優。
演技から一番かけ離れて層に見えるかれですが、パッパが唸り声主体で会話することにより、彼へのイメージがどんどん膨らんできて、とてもはまり役だったと思います。ルーはもちろんすばらしいのですが、彼がMVPだったと思います。

現状から目を背け続けるあまちゃんの主人公、若さと衝動に任せていき急ぐ女の子に、楽観的で憎めないけど危機管理ができない男の子というどこにでもありそうな青春映画の三役がそろっているわけで、普段の僕ならあまり好まないタイプの話だったと思います。
ではなぜ泣いてしまったのか。と思いましたが、
それは歌うたいのバラッドの力だったのだろうと思います。
あまちゃんで、誰も俺のことなんか、という主人公が、ルーのために、ルーを思って歌うシーンは、それまでアレンジで聞かされ続けたメロディーに歌詞が載る破壊力と相まって、それは一気にハートを揺さぶってくるのです。

湯浅監督のなんかよくわけわかんない絵とダイナミックな表現が大好きなわけで、それでだいぶ補正がかかりましたが、ラストのシーン、そして最後のエンディングに至るまで、とてもハートが揺れてしまいました。
天才と評される人は世に沢山いるが、"天才"イチローのように、必ず天才をつけて紹介されてそれがまったく違和感のない人の一人、"天才"湯浅政明監督の、最新オリジナルアニメーション映画。もちろん傑作。音楽映画の金字塔。ルー好き、大好き!!!
女の子の人魚が出てきてそれが可愛い、なんだただの『ポニョ』のパクリかと思った人、安心してください、『ポニョ』より遥かに面白いから。湯浅監督が「俺のほうが絶対面白く作れる!!」と意気込んで作ったと妄想するくらい!!!これ観た後、『ポニョ』観返したら面白く感じるかもしれないが。
その動きを観ているだけでワクワク、楽しくなる、その圧倒的でエモーショナルな作画力、アニメーションに心が踊りだし、空を飛んでるような気持になる(高所恐怖症なので実際飛んだら死ぬが)。
独特の色彩設計では『夜は短し』に軍配があがるが、見たことのないアニメーション、総合的な楽しさでは『ルー』だな。クライマックスでのこれまでの伏線の回収、たたみ方(ほんとは開き方と言いたい。。。)には泣くしかなかった。
と、手放しで褒めていますが、作中違和感や不快感を感じてしまうこともちょいちょい。ルーがとても純粋でその可愛さにメロメロになればなるほど、人間たちの汚さが目立ってしまう。モブたちが人魚の扱いを巡って右に左に簡単に流されるところや、監督に痛痒い評された、登場人物のお父さんの言動など。
監督は今作のテーマを、同調圧力が蔓延する現代において「心から好きなものを、口に出して『好き』と言えているか?」と語っているそうなので、上記の不快感は狙ってのものだろうけど、ちょっと剥き出しすぎる、毒があるかなと。繰り替えになるけど、とかくルーが可愛いだけに。
といった初回鑑賞時の中盤のモヤモヤもエンディングやプログラムで解消できたので、2回目は、ただひたするアニメーションの快楽に浸ります!!!