経済事件が題材ということもあり、前半が少し説明的で重い展開だが、イ・ビョンホン演じる金融犯罪のプロが海外に逃亡してからは、かなりテンポの良い展開となる。舞台もソウルからフイリピンのマニラに移り、スケールもグレードアップする。とにかくマニラに移ってからのイ・ビョンホンの悪人ぶりがいい。髪を白くして、髭を生やし、アロア風のシャツを着こなし、彼の新しい一面をのぞかせる。キャリアで2度目の悪役ということらしいが、あのやさしい顔立ちに悪意が宿るとき、これはかなり不思議な狂気さえ感じさせる。
韓国の犯罪史上、最大級の金融投資詐欺事件と言われる「チョ・ヒパル詐欺事件」を題材にしているらしいが、イ・ビョンホン演じる投資会社のチン・ヒョンピル会長を追う知能犯罪捜査班のキム・ジェミョン刑事役のカン・ドンウォンもまた知的でクールなスマートな演技を見せている。後半は犯人を追う側が一種のコンゲームを仕掛けていくのだが、その仕掛人の役をカン・ドンウォンが見事に演じている。そのふたりのカーチェイスのシーンもダイナミックで見応えがある。
金融詐欺事件という少々複雑な事件を扱っている割には、楽しませる要素もたっぷりあり、とにかくチープさを感じさせないリッチな映像づくりは、初めから海外市場に向けて作品をつくるという、さすが韓国映画と思わせるものがある。気に入ったセリフに、二重スパイのように振る舞うキム・ウビンが演じる天才ハッカーに向けて放たれた言葉で、どっちにつくかわからない両面テープのような奴だな、というセリフには笑った。
