純

ワイルドライフの純のレビュー・感想・評価

ワイルドライフ(2018年製作の映画)
4.4
もうこれ以上壊れないで、とどのくらい強く祈れば、わたしたちは大丈夫なままでいられたのだろう。

落ちていくときは一瞬なのだと、たったひとつの疑念や放棄が終わりへの始まりなのだと、あまりにたよりないわたしたちの時間の積み重なりに崩れ落ちそうになる。答えなんて誰も知らないよ。知っていたら、と誰もが思っている。わたしたちみんな、助けてほしい気持ちでいっぱいなんだ。

足りないと思っていた日々が、本当はとても満ち足りた場所だった。わたしは、こんな醜いものにすがってしか生きられないわたしが嫌いだ。大好きなひとが萎んでいくのに掬い上げられない自分はちっぽけだ。痛みを与えることでしかあのひとの声を聞き出せない自分が嫌だ、嫌だ、嫌だ。たった一度ひびがはいっただけなのに、質素だけれども美しい花瓶はもう、どんな接着剤でも修復できなかった。

幸せな瞬間を残す写真を撮ろう。不自然なほどに仲睦まじげに隣り合おう。僕たちなら、あの火山から逃げられるよ。もうどんな炎も怖くない。3人でずっと遠くへ行く。この気持ちをずっと覚えていたいね。脆くてかけがえのない、僕たちのささやかな在り方を。
純