富田健裕

ワイルドライフの富田健裕のレビュー・感想・評価

ワイルドライフ(2018年製作の映画)
4.0
プールの水で山火事が消せたとしたら。
彼はその様子をカメラに収めただろうか。
焼け焦げた森林の再生と、立ち上った煙霧の消去には時間が要る。
無論、消火に際した水の濾過にも。
シャッターを切る頃合はいつになるだろう。

スクリーンを飛び出さんばかりであった三人が、結局はファインダー越しに捉えられた一処に留まらなければならなくなってしまった事実は何とも言えない悲しさを携えている。

夫婦というのは署名と捺印を以てしての契約関係なのかもしれないが、親子となるとそうはいかない。子供にとって、親とは信頼の絶対的な対象でなければならない。見られなければ良いのかというそういう問題でもない。鉢合わせした瞬間に張り手が飛ぶなんてことはあってはならない。欲を言うなら夫婦関係もそうでなくてはならないとさえ思う。

ジャネットの失墜は紛れもなく冬物語のリオンティーズ宛らの有様であり言語道断。
同性としてジェリーの肩を抱いてやりたくもなるが、本人には滾る信念があったにせよ、残されて行く家族にどうしてもっと想いが及ばなかったものか。
14歳という年齢は、親を反面教師にするには余りにも若い。

「軽蔑されても仕方ないわ」

当たり前だろう。
だけど、その一言さえも子から見れば己の保身に奔走する惨めな親の姿にしかならない。子は親を選べないと、三行半にも満たない刺青を子供の心に彫ったと思え。
うっすらと火傷を負ったであろうその足の痛みは生涯忘れて欲しくはない。
俯けば、引きずれば、許してくれるなんて思って欲しくはない。
あなた達がジョーに与えた傷はそれだけ重くて深いのだ。
富田健裕

富田健裕