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さらば愛しきアウトローのmasatのレビュー・感想・評価

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)
3.9
“老人ピストル強盗”。彼は“幸せ”そうに見えた。

16回脱獄し、銃を一度も撃たなかった。
楽に生きるなんて嫌だ、楽しく生きたいと望んだ主人公の強盗は、まるでその俳優そのものだった。

いつまでも銀行強盗という夢を、微笑みながら行った。彼は、その俳優はイリュージョン、幻になりたかったのだ。

黄昏強盗と黄昏の名優が一致する、見事なるリアルさを炙り出した傑作。

そんな男、そんな俳優に対するはキャリー。
キャリーが、まだ“力”を持っている老女を演じる。その“力”は、そんな男にとって絶大で、ふとした一言がその男の胸を撃ち、初めて織り目正しく刑期を全うするのだった。
永遠に夢見がちなこんな男にとって、女とはコレほどの力を持っていないとダメなのだと、女の威力を、その作用をはっきりと映す。
それでも男は・・・わかっちゃいるぜ!と微笑むかの様なキャリーのラストカットは、コレが男と女の真実なのである。

そして、やっぱりケイシー・アフレックなんだなあ、この監督。登場のファーストカットも見事だが、レジェンドとの最初で最後のトイレでの決闘も粋であった。片や、妻である黒人女性との夫婦振りも素晴らしい。

激走するパトカーの群れを、小高い丘から馬に跨り見下ろす、そのチャッカリな勇姿がユーモラスながら、まるで!“ジ・アメリカ”を背負うワンカット、一発に収めているのが、これこそリスペクトの極致であった。
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