まっつ

さらば愛しきアウトローのまっつのレビュー・感想・評価

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)
2.7
ロバート・レッドフォードという俳優に関して、わたしはあまり語るべき言葉を持っていない。これまでに観た出演作といえば『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』と『アベンジャーズ:エンドゲーム』のみという有様だ。そのため本作を観た段階での感想は「じ、滋味深え……」といった程度のもの。

とはいえ振り返れば確かに「良いものを観た」と感じられる部分がたくさんあった。その最たるものはやはりロバート・レッドフォードはじめ役者陣の演技、ないしはキャラクターへの肉付け。全員が全員チャーミングであった。監督のみならず脚本も手掛けたデヴィッド・ロウリーは、あえてキャラクターの設定を細かく絞らなかったようだ。そこで生まれたのがあの好好爺とも呼べそうな(だけどわたしが彼と同年代だったらあまりのキラキラぶりにむしろ嫌悪していそうな)伝説の強盗フォレスト・タッカー。特にジュエルを演じたシシー・スペイセクとのシーンは全てにおいて豊かで、宝石店での一幕(そのまま行ってたら確実に盗んでたよなあれ)における、老境だからこそのプラトニックで微笑ましいやり取りはずっと見ていたくなる。

基本的にタッカーの行いはまるで正しくない。「強盗だけどいい奴だ」なんて美談は通用しない。彼を許してしまったら、例えば古谷実『ヒメアノ〜ル』の森田すら許さなければならなくなるからだ。両者とも、自分の欲望は自分では選べないことを知っていて、それに忠実に生きただけなのだ。だけどタッカーは強盗において1度も人を傷つけていない。ここが森田との違いで、つまりは自分の自由と同時に他人の自由も尊重する人物なのだ。ここがタッカーの憎めなさにも繋がっていく。一歩間違えればただ横暴に映ってしまいそうなキャラクターだがそうならなかったのは、やはりロバート・レッドフォードその人の力なのだろう。よくよく本作を思い返すとストーリーやタッカーの行動には複雑な気持ちになるものの、演技については文句のつけようがなかった。

追記
本作鑑賞後に『明日に向って撃て!』も鑑賞。冒頭の文言や銀行強盗、馬などのモチーフが本作と重なるのはパンフレットの解説等にもあることだが、まさかキャスト紹介のフォントまで同じとは!!超絶文脈映画じゃないですか……!
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