茜

さらば愛しきアウトローの茜のレビュー・感想・評価

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)
4.3
言ってしまえば本当に懲りないジジイなんだけど、その穏やかな表情といたずらっ子のような眼差しが何だか憎めない。
平坦で冴えない日常に物足りなさやつまらなさを感じている人には特に刺さりそうな、優しいアウトローの物語。

クライム映画でありながら、どこかのほほんとした雰囲気で話が進んで行くので、中盤でうっかり5分くらい眠ってしまった(笑)
フォレストはごく自然に周囲のお客に気付かれることもなく大金を強盗するので、映像もどこか淡々としており賑やかさや派手さはない。
でも大衆の抱く乱暴で恐ろしい強盗とは真逆のアプローチが新鮮で、ついついその立ち振る舞いに惹きつけられてしまう。
決して声を荒げる事もなく、ネガティブな言葉も発さず、穏やかなお喋りと些細なジョークも交えて和やかに話すフォレスト。
彼に寄り添う高齢女性を演じるシシー・スペイセクの優しい笑顔もとても可愛らしくて、この二人の会話が多幸感に溢れて心地よい。

「楽に生きることに興味はない、楽しく生きたい」というフォレストの言葉には、平坦な日常を奮い立たせる魅力がある。
私はロバート・レッドフォードについて詳しくないものの、この映画はきっと彼の功績をなぞっている部分もあるんだろうと感じた。
フォレストが馬に乗るシーンなんて、明らかにロバートの出演作を彷彿とさせる演出なんだろうなって思ったし。
「これが俺の生き方なんだ」っていう台詞はファンの人達からしたら涙なしには観れないんじゃないのかな。
フォレスト・タッカーという実在人物を描きつつ、ロバート・レッドフォードという俳優自身の半生も振り返る。
彼のしわくちゃな肌とヤンチャな笑顔を観てると、思い入れのない自分ですら心に迫るものがあった。

この物語に、この邦題。
ロバートの第二の人生に対するエールも感じたし、観ているこちらにも希望を与えてくれる優しい物語で、まさに集大成に相応しい作品ではないかと思う。