えんさん

泥棒役者のえんさんのレビュー・感想・評価

泥棒役者(2017年製作の映画)
3.0
泥棒稼業から足を洗った大貫はじめ。彼は一時期は金庫破りを稼業としていたものの、今は真面目に溶接工として働き、恋人の美沙との幸せな同棲生活を送っていた。しかしある日、彼女との待ち合わせの場で偶然出くわした強盗の元仲間に脅され、元泥棒という過去を彼女にバラされたくなかったら、これから行う豪邸での強盗計画に参加するように強要する。渋々泥棒仲間に協力することにしたはじめは、かつては売れっ子であった絵本作家の豪邸に侵入したところ、無人だと思われていた館にはその絵本作家・前園俊太郎が在宅していた。仲間は何とか見つかる前に隠れたものの、はじめは前園と偶然出くわしてしまう。絶体絶命、、のはずだったが、前園から新しく来た編集者と勘違いされたことを発端に、屋敷で出会う人から次々に別人に勘違いされ、大騒動になっていく。。「小野寺の弟・小野寺の姉」の西田征史監督が2006年に作・演出した舞台を、関ジャニ∞の丸山隆平を主演に迎え映画化した作品。

舞台劇がもとになっている作品だけあって、ほぼほぼ作品ははじめが侵入した前園俊太郎の豪邸内で行われるという、ほぼ”密室劇”といってもいい作品になっています。こうした密室コメディは同じような舞台劇が専門の三谷幸喜作品に近いものがありますが、群像的にパシパシとドラマを続けていく三谷作品と比べると、西田監督は前作「小野寺の弟・小野寺の姉」のような、少数の特定キャラクターをしっかりと使い切り、かつほのぼのとした雰囲気を大事にする(「ガチ・ボーイ」や「アフロ田中」などの脚色作品も含め)のが持ち味のように感じます。その意味では、本作の主人公はじめのどことなくリズムがおっとりした感じに、前園演じる市村正規や、セールスマンを演じるユースケ・サンタマリアなども本来ならリズム感よく追い込む形の役者も、ゆっくりとし、かつリズム感も小気味よい作品に仕上げていることを感じます。

ただ、そうした気持ちいいリズム感、演じている役者も好印象、ゲラゲラ笑いながらもほんわかするストーリー、、というおよそ想像できるであろう作品のスケール感を超える何かがあるかというと微妙なところ。よく言えば安牌な作品、悪く言うと想像した以上はない作品といった感じでしょうか。個人的には、「DESTINY 鎌倉ものがたり」でも瑞々しさを感じた、美沙を演じる高畑充希の清い演技が本作でも観られたことに、心動かされてくれたくらいでしょうか。。あと、意外な人たちがエンドクレジットにカメオ出演したのにはビックリしましたけどね。最後までお見逃しなく。。