コーヒーマメ

羅生門のコーヒーマメのレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
3.9
久しぶりの黒澤映画!
金獅子賞受賞など世界的に評価の高い本作だが、芥川龍之介原作(実は、主ネタは同名著書ではなく、『藪の中』)とのことだけあって予想以上に難解!!!
ただ痛烈に感じたのが、人間ほど都合の良い生物はいないんじゃないか、ということであり、これは他の彼の作品にも通ずることの多いテーマだ。

一人の侍の死を巡って、彼の女と、彼の女を狙う盗賊と、そして死んだ彼の魂?の声を聞く巫女らが話すそれぞれの証言をもとにその真相を探っていく。
とにかくもう、彼らの話す真相が全くもって異なるわ、異なるわ。笑
物事を自分の良いように解釈することって、現実世界でもよくある気がする。
電車の中で女の子と目が合うと、大抵勘違いしちゃうもん。←
でも、それくらいの目線で暮らさないと、ネガティブ思考に陥って生きるのが辛くなってくると思う。
本作みたいに、他人に迷惑がかかるほどの思い違いは良くないだろうけど。

そして、本作を観た誰しもが、あるシーンの京マチ子の演技に驚かされるだろう。
その衝撃は、本作そのものを観たときに感じるそれとは趣が異なる。
モノクロ映像のため、より彼女の表情が狂気的に映り、女性恐怖症の症状を悪化させられた.....
時代を問わず、女は恐い。。。

同時代の作品に比べ、黒澤映画は大衆的で比較的分かり易い部類だと思っていたので、彼の作品群でもとりわけ名の知れた本作がこう来るとは思わなかった。
『生きる』をとても好みながら本作を咀嚼し切れないあたり、自分はまだまだ未熟者だと改めて感じた。
そして、半分壊れた羅生門のセットが素晴らしい!!!