がんびーの

羅生門のがんびーののレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.5
ここ数ヶ月に鑑賞した作品の中で一番良かったかもしれません。恥ずかしながら、初めての黒澤明作品でしたが、予想を遥かに上回る面白さで驚きでした。これが1950年の作品なのか…。作品のクオリティを技術のせいにするのは良くないですね。
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映画の評価で重要視される3つ。
映像美(描写・構図など)
演技力(配役の良し悪し・役者の腕前など)
メッセージ性(映画が伝えたいこと)
かなり大雑把に分けました。これら以外にも様々な視点から映画を評価できると思いますが、少なくとも本作品をこの三つの視点で評価した時に、どれも最高得点を叩き出します。本当に素晴らしかった。メッセージ性の部分は、見たタイミングなどで受け取り方も変わると思うので、次見た時にどう思うかはわかりませんが、少なくとも今はとても良い気分。
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映像。空がとても綺麗。白黒とは思えないほど。っていうか白黒でしか出せないキメの細やかさ。下から森を見上げたときのショットとか滅茶苦茶綺麗。覆いかぶさる木々に触れるんじゃないかと思ったほどです。あと登場する役者さんの目がすごく綺麗でした。映像の問題なのか、本人の問題なのかはわかりませんが、どのかたも吸い込まれるような目をしていて生を感じました。
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演技力。どの方も迫真の演技です。不気味な笑い方をする人が多かったように感じますね。三船敏郎を初めて見た気がするのですが、予想以上にイケメンで、ヨーロッパ人っぽいなぁと思いました。ヒロインも途中から狂い始める感じ最高でした。彼らのぶっ飛んだ演技力がなかったら、映画的に重すぎたのかもしれません。彼らの掛け合い、そしてトムとジェリーのような乱闘シーンが見ていて飽きなかった理由の一つかと。
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メッセージ性。かなり人間のエゴを感じました。それぞれ自分の都合の良いように証言しますよね。少しでも自分を格好良く見せようとするさまは滑稽です。そして、ラストの15分。ここに本作品のエッセンスが全て詰まっているのではと思います。土砂降りの雨の中、人を信じることのできなくなった男二人とその話を聞く陽気な男。そしてそこに偶然の如く現れた小さな赤ん坊。自分のことしか考えない人が蠢くこの世の中に、無垢な命が一つ誕生する。せめてこの子だけは、誰かを信じれる人にしてあげよう。そうすれば自分も誰かを信じてあげれるかも。男の目の光が忘れられない。
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平安時代。激しい雨が降る羅生門の廃墟で旅法師と杣売りが首を傾げていた。そこへ走り込んで来た下人の問いに2人は不思議な話を語り始める。盗賊・多襄丸が森の中で武士の夫婦を襲い夫を殺したというが、検非違使庁での3人の証言は全く異なっていて…。三船敏郎をはじめ、森雅之、京マチ子、志村喬、千秋実ら実力派スターが集結。人間のエゴと欺瞞をあぶりだしながら、見事なエンターテイメントに仕上げている。
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ぜひぜひぜひぜひ
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