羅生門の作品情報・感想・評価

上映館(1館)

「羅生門」に投稿された感想・評価

Otun

Otunの感想・評価

4.5
黒澤明作『羅生門』。再見。再レビュー。

物語。芥川龍之介の「藪の中」と「羅生門」がベース。
平安時代。山中の藪の中で、盗賊(三船敏郎)に襲われ、妻(京マチ子)を手篭めにされた挙げ句、その夫(森雅之)は命を落とす。

真実を暴くべく、後日、検非違使(法廷みたいなもんかしら) で、盗賊、妻、そして命を落とした夫は巫女に乗り移りw、それぞれの証言をする。
食い違うそれぞれの言い分。浮かび上がる人間というもんの醜さ。その先に見える真実。

と、固く綴ればこんな感じですが、今回私が特に注目したのは、殺された夫(森雅之)。その眼差し。
前に観たときは、三船敏郎の豪快な菊千代芝居だったり、京マチ子さんのおどろおどろしい妖怪芝居だったりしたのですが、今回は森さんでした。森さんの眼差し。ええ、私もだいぶ渋い味のわかる年齢になってきました。

中盤。検非違使で妻の証言の時、彼女はこう回想します。
「私を手篭めにしたあと、嘲りながら盗賊は去りました。すぐに縛られている夫に駆け寄り、彼にしがみつくと、夫が自分をさげすんだ目でみていた」。

この回想の時、画面はその時の京マチ子さんを捉えおり、森さんは後ろ姿です。まだどんな顔、どんな眼差しをしているか分かりません。

その眼差しを全身浴びた京マチ子さんの動揺した顔、かーらーの、画面切り替わっての、森さん。

その、氷の様な目。
さげすんだ、眼差し。

こりゃあいいです。人生でそこそこさげすんだ眼差しを向けられた事のある私にですら、ここまでの眼差しは知りません。あと、なんかちょっと笑えます。見ようによっては眠たくてそれと闘ってるだけとかにも見えます。それもまたいいです。

こちらの眼差し。例えば、恋人が浮気しているかもしれない。最近亭主の帰りが遅い。友人が貸した金を返さない。そもそも姑と気が合わない、などなど、皆さまの私生活のあらゆる場面で応用が可能だと思われます。

ぜひ、今作での森さんの「さげすんだ眼差し」を体得し、皆さま、元気な人生を送りましょう!
YRFW

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4.8
『椿三十郎』に続いて二作目の黒澤作品。

「真実は藪の中」

舞台は、飢餓に苦しむ悲壮な平安時代。
雨宿りをしている木こりと坊さんが、恐ろしい話を目の当たりにしたといって下人に対して語るところから始まる。
登場人物は、多襄丸と美しい夫妻である。だが夫が死骸となり藪の中で見つかる。さらに妻の持っていた高価な短剣が消失する。
木こりと坊さんはこの物語の傍観者でる。

明確な事実は存在するはずであるが、当事者三人と傍観者一名により語られる殺人のシナリオは全く異なる。
当事者はそれぞれ自分が殺してしまったという結末のシナリオを提示する。だがその過程や感情の起伏は、傍観者含めた四者、各々が真実を隠そうと、恣意的に自己を肯定する部分のみを語っている。
木こりと坊さんはこれにより真実を見失い、人間本質すらわからねぇ、とぼやき続ける。

だが実は木こりは、真実を知っていたのだ。意見が分かれるだろうが、私は木こりの話こそが真相だと解釈した。

藪の中の話を羅生門の下でしているわけだが、羅生門での展開においては、天使と悪魔のような構図だ。
下人は人間の悪を説き続ける悪魔だ。坊さんは人間を善であると願い続ける天使だ。
だが坊さんは眼前にある嘘を吐きまくる人間に、絶望を抱いてしまっている。その為に、下人つまり悪魔に軍配が上がりそうな展開が終盤までは続く。降り注ぐ雨はそのメタだ。

ここで木こりの存在が重要となる。
木こりは、咎められるべき盗みという行為をしたことを下人に暴かれ、人間は悪の存在でしかなく、この世は地獄と証明され、万事休すかと思われたが、最終盤に出てくる赤ん坊によりそれは覆る。
赤ん坊に手を伸ばす木こりを見て、お坊さんは、「赤子まで取るというのか!」と叱咤する。だが木こりは六人子供がいて、七人でも変わらないので自分が引き取るという意思表示をする。
ここに坊さんは救われる。久しく見ていなかった、善の存在を確かに感じることができたのだ。ここで雨が上がる。遂に悪魔を撃退できたのだ。
主人公が、多襄丸から木こりに更には坊さんと変化し、完結するのだ。

間一髪のところで、善が勝利するが、これはごくごく身近なところで頻発している。
藪の中での殺人の話にあるように、人間はエゴイスティックな悪によりこの世界を生き抜こうとする。少なからず皆そうだ。だがそんな時にも、小さな善を見つけ、悪魔に魂を売らずに懸命に生きることを教訓として日々を繰り返す。木こりはそれが最も表された普遍的な人間像ではないだろうか。
みーる

みーるの感想・評価

3.0
一つの事件への食い違う証言から人間のエゴイズムを描いた作品。
今もこの手の作品多いけど、ここまでシンプルなのは時代を感じる。
かと言って飽きることなく、モノクロなのに色を感じられるような感覚になった。
やっぱり上手いんだろうな〜。
creamymami

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3.0
雨の日に観たい映画といえばこれ
sghryt

sghrytの感想・評価

3.5
認識論。独我論の気配が漂う。
汗の光り方とか、荒い呼吸とか生々しくていい。
moe

moeの感想・評価

4.7

このレビューはネタバレを含みます

生きるために嘘をついたり、盗みをしたり、殺したり。そしてそれは「自分が弱い」からしてしまう。
終盤の杣売りがおそらく事実であろうシーンを語る場面では多襄丸も女の夫もそれまでの供述とは違い恐怖に腰が引けてとても弱々しかった。
しかし杣売りは女の短刀を盗んでおり、この話も事実なのかは分からない。

個人的にめちゃめちゃ面白かったのは最後のシーン。捨て子の着物を盗んだ人と杣売りのやり取りでもエゴイズムが強く表れている。盗人は羅生門を出て行き、杣売りは捨て子を受け取って盗人とは反対方向に出て行く、盗人の方向は「悪」で杣売りの方向は「善」なのか。しかし、杣売りが捨て子から何も盗まずに育てるという確信はない。旅法師が杣売りを見送るシーンでは杣売りにピントが合って旅法師はぼやけている。旅法師は杣売りに対し「疑い」の念が生まれているのでないかと感じた。もし、杣売りが捨て子から何かを盗んだり、また捨てたりしたら杣売りの方向も「悪」になる。羅生門のどちらの方向も「悪」となると下人の「いったい正しい人間なんているのかい、皆そう思ってるだけじゃねぇのか」という台詞に繋がる。

「善良な人間を見極めなさい。」そう言われているような作品だった。

あと、京マチ子の憑依されたような演技力と妖麗な雰囲気が凄まじかった。
Hnk

Hnkの感想・評価

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カメラワーク、そして人間…て感じ。

人間の傲慢さを思い知らされたと同時に、それを知った上で人を信じるという心の強さを感じた。絶望からの小さい希望だわ。
そしてカメラワーク。場所、空、人の撮影が美しい。ボレロ風の音楽も。
定期的に味わいたい作品
goo

gooの感想・評価

4.0
人間の恐ろしさをそれぞれの視点で描いた黒澤作品。
三船の憎めないキャラクターと
降りしきる雨が印象的。
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