ひば

沈黙/ある沈黙のひばのレビュー・感想・評価

沈黙/ある沈黙(2016年製作の映画)
4.0
女の意思は二の次。特に母子なら子供(未来の資源であり希望の象徴である故)を優先する社会にある種の諦めと理不尽さに心がついていかない部分はやっぱりある。世界は知識も感性も養われた女性より未熟な若葉を愛し子供に尽くす母親像を愛する。大人になれって何も考えるな黙ってろの意でしょって、そんな会話が密やかに聞こえる。子供を寄せれば母性は勝手に沸き出てくるんでしょ、尊ぶべきは手のかかる人間を大きな愛で包むような子を慈しむ情景、いつまでも少年でいられる男社会に向ける無償の寛大さ。本来の意の母性なんて世界は見向きもしない。女性が子供に向ける眼差しは母性だけではないと知っているか。それは同じ弱者に向ける経験からの同調だ。清純に、口を噤み、聖母になれと子を生む神秘の恩恵だけ啜って余りを檻に閉じ込めたような場所に用はない。ボーダーを越えれば大人になれるわけじゃないと皆知っているのに皆がそれに加担する。檻は広く家からどこまででも広がっている。でもこれは私じゃない物語
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