emily

グループ・バイオレンスのemilyのレビュー・感想・評価

グループ・バイオレンス(2015年製作の映画)
3.8
ブルカを纏った女性たちがここ一週間ぐらい夜の街に現れては警察を挑発し、若者たちの争いを誘発させていた。一方今はおとなしく暮らしているヴァンスも日々の暮らしに疲れ、昔の自分に戻りそうで葛藤していた。

オレンジの服と黒の服のヴァンス。対照的な色により、時間軸と感情をあらわにしている。ナレーションに過去が交差していく。規則正しいアパルトメントの外観の窓から、その生活、嫌気の刺す同じことの繰り返しと、浮き上がるブルカを纏った人々。ヴァンスを演じるのはなんとヴァンサン・カッセルである。ナレーションの声が、言葉の繋ぎが美しい。単語に回想を切り替えてるが、めまぐるしくなく、自然な流れで、そこに焦点のあってないパトカーの通りすぎていく姿を意味深に挿入する。黒い影に覆われるのように不穏な空気が回想とナレーションでしっかり形成し、決心の際の不気味な階段を下から捉える絵も心情を捉えている。

狭い廊下を走る男たち、やり遂げた興奮のあとに虚しさだけがただよう。黒い影に誘発され、眠っていた怒りがあらわになる。落ちるのは簡単である。そうして救いを求めたその穏やかそうに見える場所がまた、さらなる不穏感を残す。その皮肉が、タイトルにしっかり繋がっており、想像を掻き立てるラストが余韻として作品をそこあげしてくれている。
emily

emily